金森 明¹, 熊田 卓¹, 桐山 勢生¹, 谷川 誠¹, 久永 康宏¹, 豊田 秀徳¹, 坂野 信也², 竹島 賢治², 乙部 克彦², 高橋 健一²

Akira KANAMAORI¹, Takashi KUMADA¹, Seiki KIRIYAMA¹, Makoto TANIKAWA¹, Yasuhiro HISANAGA¹, Hidenori TOYODA¹, Shinya BANNO², Kenji TAKESHIMA², Katsuhiko OTOBE², Kenichi TAKAHASHI²

¹大垣市民病院消化器科, ²大垣市民病院医療技術部診療検査科

¹Gastroenterology, Ogaki municipal hospital, ²Clinical research, Ogaki municipal hospital

キーワード :

【背景と目的】
近年，各種画像診断法の発達や，新たな診断機器の登場により膵疾患の診断能は向上してきた．現在においても体外式超音波検査は簡便で低侵襲であり膵疾患に対する第一に施行すべき検査法である．近年になり超音波造影剤が開発された．Levovist^®を用いた造影超音波検査（CE-US）は従来のB-mode画像による評価に血流動態の評価をリアルタイムに加味することが可能となり，質的診断能は飛躍的に進歩した．さらに第二世代低音圧性超音波造影剤Sonazoid^®が開発され，Levovist^®では困難であった，比較的長時間の観察やmicro flow imaging（MFI）をはじめとした各種撮像法により高分解で質の高い画像が得られるようになった．CE-USは質的診断を有するmodalityとして従来の存在診断を目的としたB-mode画像より検査の持つ意味が変わりつつある．今回我々は膵癌に対してのCE-USの有用性と各種超音波造影剤での画像診断について検討を行った．
【対象と方法】
Levovist^® を用いてCE-USを施行した時期（L期）とSonazoid^®を用いてCE-USを施行した時期（S期）で検討した．L期（n＝34）は全例手術症例で病理組織像と対比した．その染影効果によりAからEの5つのパターンに分類した．A: 染影効果に乏しく，造影前と比し腫瘤のsize変化（-）で内部に点在する高輝度領域を認めたもの　B: 染影効果に乏しく，造影前と比しsize変化（-）で内部に点在する高輝度領域を認めなかったもの　C: 染影効果に乏しく，造影前と比しsizeが小さくなりかつ内部に点在する高輝度領域を認めたもの　D: 染影効果に乏しく，造影前と比しsizeが小さくなりかつ内部に点在する高輝度領域を認めなかったもの　E: 染影効果に富んだもの，とした．S期（n＝18）は手術例もしくは超音波内視鏡下穿刺生検法（EUS-FNA）にて膵癌と組織診断が可能であった症例を対象とし，L期にて病理組織と対比したパターン分類を使用しかつ　F: 不均一に染影効果を認めたものを分類に追加した．撮像装置はS期はSiemens 社 Elegraを使用，撮像条件は送信周波数2.8MHz，MI値1.7から1.9，Focus point は腫瘍下縁とした．Levovist^®を300mg/mlの濃度で経静脈的に投与し，Early phaseは投与後20から50秒後，Delay phaseは約90秒後とした．L期は東芝社Aplio XG を使用，撮像条件は送信周波数2.5から5.0MHzで任意に設定，MI値0.2から0.3，Focus point は腫瘍下縁とした．Sonazoid^®0.005mg/kgを経静脈的に投与した後，15秒から60秒後までを連続観察し10分後より肝臓の後血管相にて転移巣の有無を検索した．
【結果】
L期で染影効果に富んだものはE（n＝3）いずれもが乳頭腺癌であった．31例の管状腺癌はパターンA（n＝1），B（n＝6），C（n＝9），D（n＝15）に分類された．これらのうち10例は内部に高輝度領域が認められ（AorC）うち9例には腫瘍血管を認めた．高輝度領域を認めなかったもの21例（BorD）ではわずかに1例に腫瘍血管を認めた（p＜0.0001）．size変化のみられなかった病変7例のうち5例は腫瘍の境界が明瞭で癌細胞の浸潤や炎症が見られなかったが，size変化のみられた病変24例は全例に癌細胞の浸潤や炎症が見られなかった（p＜0.0001）．S期ではパターンA（n＝3），B（n＝2），C（n＝6），D（n＝5），F（n＝2）に分類された．S期と同様の染影パターンを得ることができ，繰り返しリアルタイムでの質の高い評価が可能であった．またL期に比しパターンA，F等の強い染影効果の得られるものが増加する傾向にあった．
【結語】
CE-USは病理組織を反映した有用な情報を提供し，低侵襲で繰り返し画像を構築できるSonazoid^®を用いることでより精度の高い質的診断を行うことが可能である．