Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

ワークショップ
ワークショップ1
消化器疾患におけるInterventional Sonography

(S257)

超音波ガイド下の中心静脈穿刺手技のコツ

Tips for ultrasound-guided central venous catheterization

堀田 訓久, 瀬尾 憲正

Kunihisa HOTTA, Norimasa SEO

自治医科大学麻酔科学・集中治療医学

Anesthesiology and critical care medicine, jichi medical university

キーワード :

中心静脈穿刺は従来ランドマーク法で広く行われてきたが,近年,超音波ガイド下の穿刺手技が普及しつつある.中心静脈穿刺には動脈誤穿刺,気胸,血胸等の合併症があり,これらの発生には,施術者の技術的な要因の他に,患者の体型や解剖学的異常なども関与している.そのため,一般的なランドマークのみでは対応困難な場合があり,より安全で円滑な穿刺手技を行うには,超音波画像で目標とする血管を可視化した上で,画像ガイド下に穿刺することが推奨される.これまでの報告でも,超音波ガイド下の手技はランドマークによる手技と比べて,より安全で確実に施行できることが示されている.しかしながら,本手技を導入するにあたっては,ある程度の知識とトレーニングが必要である.すでにランドマーク法に慣れた人にとっては,穿刺針の操作と同時に超音波プローブの操作が必要なことや,ランドマーク法とは異なる穿刺手技のコツがあるために,初めは容易と感じられないかもしれない.穿刺法には平行法と交差法があり,それぞれ一長一短がある.平行法は血管および針の長軸像を描出することができるので,針先の位置を把握するのに有利である.このことは,安全上の重要なポイントであり,針に関する多くの画像情報を得ることができる.しかしながら,わずかな幅の超音波走査面内に針を刺入し,針の全長を描出することは,実際にはなかなか難しい.並走する動脈を,静脈と誤って穿刺する可能性もある.一方,交差法では血管の短軸像を描出し,走査面内を通過した針は高エコー性の点として描出される.針先の位置を正確に把握するのは難しいが,針先を超音波走査面に近づけるような調整を行い,針の周囲組織の動きなどを指標にすれば,血管を穿刺するのはそれほど困難ではない.針が血管壁を貫通するときには,血管壁が下方にたわんだ後に元の位置まで戻るので,超音波画像における血管穿刺のサインとなる.内頚静脈は気胸のリスクが低いので,まず初めに選択する部位として適している.プローブを胸鎖乳突筋の上に当てて,内頚静脈の短軸像を描出し,総経動脈との重なりが少ない部位で穿刺を行うのがよい.鎖骨下静脈は鎖骨の背面を走行しているので,超音波画像の描出はやや困難であり,超音波ガイド法ではより遠位の腋窩静脈を描出して,静脈が鎖骨の背面に入る手前で穿刺することになる.ランドマーク法とは穿刺ポイントが異なることを認識して行わないと,超音波ガイド法の利点を十分に生かせない.超音波ガイド下の中心静脈穿刺は,ランドマーク法に対して安全性および確実性の点で優れているため,すべての穿刺症例において実施されることが望まれる.