Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

ワークショップ
ワークショップ1
消化器疾患におけるInterventional Sonography

(S256)

経皮経食道胃瘻造設術(PTEG)の有用性と問題点

The efficacy and limitations of Percutaneous transesophageal gastrostomy

原田 喜博1, 藤田 直孝1, 石田 一彦2

Yoshihiro HARADA1, Naotaka FUJITA1, Kazuhiko ISHIDA2

1仙台市医療センター仙台オープン病院消化器内科, 2石田医院

1Department of Gastroenterology, Sendai City Medical Center, 2Ishida Clinic

キーワード :

【背景・目的】
経皮経食道胃瘻造設術(PTEG)は経管栄養またはドレナージが必要でありながら,内視鏡的胃瘻造設術(PEG)が困難な症例に対し,透視下にエコーを用いて,頸部から胃瘻を造設する手技である.当科で施行したPTEG症例を検討し,その有用性と問題点を明らかにすることを目的とした.
【方法】
PTEG造設には,住友ベークライト社製PTFGキットを用い,超音波装置は,ALOKA 社製SSD-3500,プローブは7.5MHzの穿刺用プローブを用いた.造設は透視下で行う.まず左側頸部から,甲状腺,内頸動・静脈,気管,食道の位置関係をエコーで確認する.経鼻的にキット付属のバルーン(非破裂型穿刺用バルーン)を挿入し,頸部食道でバルーンを拡張させ,甲状腺左葉と内頸動・静脈の間に穿刺ルートを作りだす.バルーンをエコーガイド下に穿刺し,バルーン内にガイドワイヤーを留置後,これを胃内まで誘導する.ガイドワイヤーに沿ってダイレーションを行い,カテーテルを留置する.対象は,当科で2001年1月から2009年10月までにPTEGを行った70症例(男:女34:36,平均年齢74歳).基礎疾患は,脳梗塞後遺症21例,脳出血後遺症17例,胃癌などの悪性腫瘍17例,パーキンソン病4例,認知症4例,ALS 4例,その他9例である.それらについて以下の項目を検討した.①選択理由,②造設目的,③平均造設時間,④造設時合併症,⑤造設不可能症例,⑥目的に対する効果,⑦造設後早期合併症,⑧造設後晩期合併症.
【結果】
①選択理由:胃切除術後31例,腹水多量15例,VPシャント13例,胃の位置異常7例,その他の理由でPEG不可能5例.②造設目的:栄養目的51例,ドレナージ・減圧目的19例.③平均造設時間:28(12-60)分.④造設時合併症:なし.造設中に認めた軽微なトラブルとして,バルーンからのガイドワイヤー逸脱2例.⑤造設不可能症例:6例で造設不可能であった.穿刺ルート上に甲状腺が存在3例,大動脈弓部置換術後でバルーン視認が不可1例,頸部多発リンパ節腫大1例,バルーン挿入後にSpO2が低下して断念した1例.⑥目的に対する効果:癌性腹膜炎で腸閉塞のドレナージ目的で造設した1例を除き,全例で有効であった.⑦造設後早期合併症:38℃以上の発熱4例,事故抜去2例,kinkingで流出不良となったもの1例.発熱は抗菌薬投与で全例改善した.事故抜去の1例は再挿入可能であったが,1例は瘻孔が閉鎖し,再挿入不可能であった.⑧造設後晩期合併症:事故抜去20例,カテーテル損傷2例,瘻穿部感染1例を認めた.
【結論】
PTEGは91%で造設可能であり,術中に重篤な合併症を認めなかった.造設後は,十分な治療効果が得られ,PEG困難例には積極的に用いられるべき手技と考えられた.また,造設後早期・晩期合併症ともに重篤なものは認めなかった.しかし,造設後晩期合併症として,31%に事故抜去を認め,事故抜去対策が今後の課題と考えられた.また,現在PTEGは保険適応が認められておらず,早期の保険適応が望まれる.