Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

ワークショップ
ワークショップ1
消化器疾患におけるInterventional Sonography

(S255)

切除不能局所進行膵癌に対する超音波内視鏡を用いた免疫細胞療法

Immunotherapy using EUS-FNI (fine needle injection) for the locally advanced unresectable pancreatic cancer

廣岡 芳樹1, 伊藤 彰浩2, 川嶋 啓揮2, 中村 正直2, 宮原 良二1, 大宮 直木2, 林 和彦2, 片野 義明2, 後藤 秀実1, 2

Yoshiki HIROOKA1, Akihiro ITOH2, Hiroki KAWASHIMA2, Masanao NAKAMURA2, Ryoji MIYAHARA1, Naoki OHMIYA2, Kazuhiko HAYASHI2, Yoshiaki KATANO2, Hidemi GOTO1, 2

1名古屋大学医学部付属病院光学医療診療部, 2名古屋大学大学院医学系研究科消化器内科学

1Department of Endoscopy, Nagoya University Hospital, 2Department of Gastroenterology, Nagoya University Graduate School of Medicine

キーワード :

【背景】
近年,超音波内視鏡(EUS)ガイド下で行う種々の治療手技(Interventional EUS)の発展が目覚ましい.現時点では,この技術はEUSガイド下で行うドレナージ術(膵仮性嚢胞ドレナージ,胆道ドレナージなど)と薬物や細胞などを注入するもの(EUS-FNI: fine needle injection)に大別されている.EUS-FNIで注入するものには,物理的作用を有するアルコールなどと分子生物学的な作用を期待する各種遺伝子,細胞,抗癌剤などが候補として考えられる.当科では,以前から切除不能局所進行膵癌に対してEUSガイド下に樹状細胞(DC)を局注する免疫細胞療法を実施している.今回は,本手技の概要について報告する.
【はじめに】
樹状細胞(DC)は種々の死細胞の取り込みとプロセシングを行い,MHCクラスI,II両方に作用する強力な抗原提示細胞である.体外に十分量の細胞を取り出せない切除不能局所進行膵癌に対し未熟樹状細胞(imDC)をEUSガイド下で局注し,局所での上記反応を期待し第1相臨床試験を実施し,現在,第2相臨床試験実施中でこれらの成績を検討する.
【対象と方法】
1.第1相:対象は切除不能局所進行膵癌で前治療無の5例(男女比1:4,年齢46-69).対象患者に初回imDC局注(LAK全身投与同時実施)2週間前に成分採血を実施しimDCの培養を行った.局注3日前に外来で塩酸ジェムシタビン(GEM)の点滴静注実施.これを2週間毎に行い6回1コースとした.2.第2相では上記imDC培養時にγδT細胞が増殖されるゾレドロン酸を用いた点と経過中に腫瘍組織,周囲リンパ組織採取を可能とした点が主な相違である.現在,4例(男女比2:2,年齢49-69)に実施中(目標10例).
【成績】
1.第1相:PR: long SD: PD=1:2:2で,PFS(progression-free survival) 74-554ds,OS(overall survival) 278-762ds,MST(median survival time) 15.9ms.Grade 3, 4の有害事象は認めず.本治療後R0手術し得た症例では疾患特異的な免疫応答反応が生じていたことが確認された(Pancreas;38:e69-74 2009).2.第2相:1例目は12か月原病死,2例目は5か月にてPDとなり現在2次治療実施中,3, 4例目は6か月間SD.3, 4例目では経過中採取した周囲リンパ節組織の免染ではCD4陰性,Fox-p3陰性,CD8陽性細胞を認めた.
【結語】
局所進行膵癌に対する免疫細胞療法は安全に実施可能であり,治療効果も満足すべきものであると考える.本治療法が有用である症例を施行前あるいは施行中にモニタリング可能であれば,免疫細胞療法のテーラーメイド化への道が開かれる.なお,本臨床研究は,免疫細胞療法を瀬田クリニック 新横浜との共同で,免疫学的検査を株式会社メディネットとの共同で実施した.