Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

ワークショップ
ワークショップ1
消化器疾患におけるInterventional Sonography

(S255)

癌性疼痛におけるEUS下広範囲腹腔神経叢融解術の有用性の検討:preliminary study

EUS-guided broad plexus-neurolysis over the superior mesenteric artery using a 25 gauge needle

坂本 洋城, 北野 雅之, 工藤 正俊

Hiroki SAKAMOTO, Masayuki KITANO, Masatosi KUDO

近畿大学消化器内科

589-8511, Gastroenterology and Hepatology, Kinki University of School Medicine

キーワード :

【背景】
超音波内視鏡ガイド下腹腔神経叢融解術(EUS-CPN)は腹部癌性疼痛に対し,安全で有用な疼痛緩和手技である.しかしながら,EUS-CPNが無効な腹部癌性疼痛症例も存在する.今回我々は,25G穿刺針を用いた超音波内視鏡下広範囲腹腔神経叢融解術(EUS-BPN)の有用性を検討した.
【目的および方法】
腹部癌性疼痛症例に対し,EUS-BPNと従来のEUS-CPNを疼痛緩和効果について比較検討した.内視鏡はOLYMPUS社製GF-UC240P-AL5,画像表示はALOKA社製ProSound SSD-5500またはα-10を使用した.EUS-CPNは腹腔動脈の右側に22G穿刺針を穿刺し,1%リドカイン3mlを注入し,次いで水溶性造影剤(イオパミロン)を含有した100%エタノール10mlを同部位に注入し,左側にも同様の処置を行った.EUS-BPNは25G穿刺針を用い,EUS-CPN同様にリドカイン3mlおよび水溶性造影剤エタノール10mlを上腸間膜動脈の右側に注入した後,次いで左側に注入した.手技直後,腹部CT検査にて造影剤の注入範囲を評価した.注入範囲は腹腔動脈と上腸管膜動脈の各上下左右,合計6領域に分け,注入範囲と疼痛改善との関連性を検討した.疼痛の程度はVAS(Visual analog pain scale)を用い10段階に評価し,手技直後,7日後,30日後にVASの改善度を測定した.
【結果】
腹部癌性疼痛症例67例(EUS-CPN群34例,EUS-BPN群33例)を対象とした.患者背景は両群ともに差は認めなかった.6領域注入群は5領域以下の注入群に比べ7および30日とも有意にVASの改善を認めた.6領域全てにエタノールが注入された割合はEUS-BPN群(42%)がEUS-CPN群(0%)であった.手技直後,7日後,30日後にVAS はEUS-CPN群: 7.8± 1.1,3.9± 2.0,4.8 ± 2.2,EUS-BPN群; 7.8± 1.2,2.5± 1.9,3.4 ± 2.5であり,EUS-BPN群がEUS-CPN群に比べ有意差にVASの改善を認めた.両群とも重篤な合併症は認めず.
【結語】
癌性疼痛において,EUS-BPNはEUS-CPNに比べ優れた疼痛緩和効果を得ることが可能であり,有用な新しい疼痛緩和手段の一つになりうると示唆された.