Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

ワークショップ
ワークショップ1
消化器疾患におけるInterventional Sonography

(S254)

膵疾患に対する超音波内視鏡ガイド下ドレナージ術

Endoscopic ultrasonography-guided drainage for pancreatic diseases

北野 雅之, 小牧 孝充, 坂本 洋城, 今井 元, 鎌田 研, 工藤 正俊

Msayuki KITANO, Takamitsu KOMAKI, Hiroki SAKAMOTO, Hajime IMAI, Ken KAMATA, Masatoshi KUDO

近畿大学医学部消化器内科

Gastroenterology and Hepatology, Kinki University School of Medicine

キーワード :

【目的】
近年,膵疾患,特に膵仮性嚢胞に対する治療として,超音波内視鏡を用いたドレナージ術が発展し普及してきている.本法は膵仮性嚢胞を超音波内視鏡で消化管よりリアルタイムに観察しながら穿刺し,穿刺孔よりドレナージ用ステントを留置する治療手技である.ドプラモードにて介在血管を避けることができる点,近接した消化管へ嚢胞液がドレナージされる点で,開腹下の嚢胞空腸吻合術あるいは経皮的ドレナージと比較すると低侵襲的であり,膵仮性嚢胞に対する第一選択の治療として認識されている.さらに本法は,閉塞性膵炎に対する膵管ドレナージ術にも応用されてきている.そこで,膵疾患に対する超音波内視鏡ガイド下ドレナージ術の手技および当院における治療成績について報告する.
【対象】
2009年12月までに,超音波内視鏡を用いて膵仮性嚢胞ドレナージ術(EUS-PCD)および膵管ドレナージ術(EUS-PD)をそれぞれ29例(35セッション),3例(3セッション)施行した.EUS-PCDは,膵管との交通がない6cm以上の膵仮性嚢胞で6週間以上経過した場合あるいは有症状(発熱,腹痛等)を適応とした.超音波内視鏡にて膵仮性嚢胞を描出し,19G穿刺針(EchoTip,Cook)を嚢胞内へ穿刺した.ガイドワイヤーを嚢胞内へ挿入した後,嚢胞壁を胆道拡張用カテーテルで拡張した.引き続き,ガイドワイヤーに被せて両端ピッグテイルステントを挿入した.感染性嚢胞の場合には,さらに経鼻ドレナージチュープを挿入し,嚢胞内を洗浄した.EUS-PDは急性膵炎後,あるいは膵胃吻合術後で膵と胃の間に癒着が存在する閉塞性膵炎を対象とした.超音波内視鏡ガイド下で胃体部より拡張膵管を穿刺した.ガイドワイヤーを穿刺針から膵管内へ挿入し,ガイドワイヤーが膵管の狭窄部を通過し,乳頭部(あるいは膵胃吻合部)より消化管へ進行した場合には,側視鏡を用いてランデブー法により膵管ステントを留置した.ガイドワイヤーが狭窄部を通過しない場合には,穿刺孔を拡張し,穿刺孔より胃−膵間でステント留置を行った.EUS-PCDおよびEUS-PDの治療成績および偶発症を評価した.
【成績】
EUS-PCD:治療前は平均嚢胞径72.3mmであった.感染性膵仮性嚢胞(11例)には内外瘻術を,その他の症例には内瘻術を行った.1例は嚢胞の改善が認められず外科的治療を行った.86%の仮性嚢胞が縮小あるいは消失し,再発率は7.4 %(平均無症状期間 16.3月)であった.偶発症として,1例に膵炎の増悪が認められた.EUS-PD:1例はランデブー-法により経副乳頭的に主膵管内にステント留置を行った.2例は穿刺部にステント留置を行った.全症例でステント留置に成功したが1例で膵液漏による限局性腹膜炎が出現したが,保存的治療で改善した.
【結語】
EUSガイド下ドレナージ術は膵仮性嚢胞に対する第一選択の治療となりうる.また,閉塞性膵炎に対する新しい低侵襲治療として期待される.