Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

ワークショップ
ワークショップ1
消化器疾患におけるInterventional Sonography

(S253)

膵仮性嚢胞に対するInterventional EUSの検討

Efficacy of the EUS guided transmural drainage of pancreatic pseudocysts

加藤 博也, 河本 博文, 榊原 一郎, 山本 直樹, 堀口 繁, 堤 康一郎, 藤井 雅邦, 平尾 謙, 栗原 直子, 山本 和秀

Hironari KATO, Hirofumi KAWAMOTO, Ichiro SAKAKIHARA, Naoki YAMAMOTO, Shigeru HORIGUCHI, Kouichiro TSUTSUMI, Masakuni FUJII, Ken HIRAO, Naoko KURIHARA, Kazuhide YAMAMOTO

岡山大学病院消化器内科

Depatment of Gastroenterology and Hepatology, Okayama University Hospital

キーワード :

【目的】
膵仮性嚢胞に対する治療として,EUSガイド下に経消化管的ドレナージが行われるようになってきているが,その適応や手技については一定の見解がない.当施設で行った,膵仮性嚢胞に対するInterventional EUSの成績について検討した.
【対象と方法】
対象は2003年1月から2009年11月の間に当施設で経験した発熱,疼痛などの臨床症状を伴う膵仮性嚢胞40例(男:女=32:8,平均年齢56歳,観察期間中央値22.3カ月(1-84)).原疾患の内訳は慢性膵炎が19例,膵癌が10例,重症急性膵炎後が8例,その他,外傷や手術に伴うものが3例であった.嚢胞最大径の中央値は62mm(28-149)で,感染性嚢胞が17例(43%),非感染性嚢胞が23例(57%)であった.ドレナージは,コンベックス型の超音波内視鏡(UCT240:オリンパス社)を用いて嚢胞を同定し,穿刺ルートに脈管がないこと,胃壁と嚢胞壁の距離などを確認しながら穿刺部位を決定し,19G穿刺針(Echotip ultra:Cook社)で穿刺後,内容液の性状やガイドワイヤーの動きから嚢胞内であることを確認した.5Frの先端tapering catheter,7Fr dilation catheter,さらに8mm径のballoon catheterで漸次拡張し,嚢胞壁が固い場合には,Soehendra stent retrieverやneedle knifeをdilatorとして併用した.拡張後はdouble lumen catheterを用いてdouble guidewireとしたのち,60mm未満で感染を伴わない嚢胞は複数の7FrZimmon型plastic stent(PS)を留置して内瘻のみとし,60mm以上,あるいは感染性嚢胞に対しては,複数のPS,および経鼻チューブを留置して内外瘻とすることを基本とした.PS留置によるドレナージで効果のみられない,内腔に壊死物質を伴う感染の重篤な嚢胞に対しては,内視鏡による嚢胞内debridmentを行った.内腔のfluidが消失し,感染が沈静化した時点で外瘻は抜去することとし,成功率,合併症,嚢胞が縮小するまでのsession数について検討した.
【成績】
EUSガイド下経消化管的ドレナージは全例で成功し,嚢胞は全て縮小消失した.60mm以上,あるいは感染性嚢胞は29例あり,初回のsessionで内外瘻としたものは19例(66%)で,そのうち13例は追加sessionの必要はなかったが,内外瘻としなかった10例(34%)例中9例は2回以上のsessionを必要とした(P<0.01).内視鏡による嚢胞内debridementを必要としたものは5例(13%)であった.PS留置に伴う合併症は5例(8%)に認め,出血が1例,plastic stentの迷入が3例(嚢胞内2例,網嚢腔内1例),嚢胞液の漏出による限局性腹膜炎が1例であったがいずれも保存的加療で改善した.外瘻抜去後に嚢胞の増大,感染の再燃を認めた症例はなく,内瘻を抜去した22例中,嚢胞の増大あるいは感染を3例(13.6%)に認め,1例は保存的に,1例は膵管ドレナージで改善したが,1例は再ドレナージが必要となった.
【結語】
膵仮性嚢胞に対するEUSガイド下経消化管的ドレナージはballoon catheterによる瘻孔拡張,さらにdouble guidewireとすることで複数本ドレナージチューブを留置することが可能であり,安全確実にドレナージすることができる.60mm以上あるいは感染を伴う嚢胞については,まず内外瘻とすることで良好な結果が得られるが,内瘻抜去については抜去の要否を含め,今後の検討が必要である.