Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

ワークショップ
ワークショップ1
消化器疾患におけるInterventional Sonography

(S250)

大型肝細胞癌に対するTAE併用RFA治療の成績と造影超音波支援の有用性

Results of radiofrequency ablation combined with transcatheter arterial chemo-embolization for large sized nodular hepatocellular carcinoma assisted interventional sonography

田中 正俊1, 佐田 通夫2

Masatoshi TANAKA1, Michio SATA2

1久留米大学医療センター消化器内科, 2久留米大学医学部消化器内科

1Gastroenterology and Hepatology, Kurume University Medical Center, 2Gastroenterology, Kurume University School of Medicine

キーワード :

【目的】
腫瘍径3cm以下の非切除結節型肝細胞癌の治療としてラジオ波焼灼療法 (RFA)は肝切除とともに治癒治療として認められている.一方,腫瘍径3cm超の肝細胞癌に対する適応は一般に肝動脈塞栓術 (TAE)とされRFAの併用効果については結論が出ていない.しかしTAE単独治療における局所再発は1年では50%程度と考えられており,局所治療効果の高いRFAの併用効果増強は想像に難くない.また2007年から使用できるようになったソナゾイド造影超音波治療支援によりTAE後の血流遺残部位の同定が容易となりRFAの併用効果増強がより確実になった.そこで当院の治療成績を解析して大型肝細胞癌に対するTAE併用RFA治療の効果を検討した.
【対象と方法】
久留米大学医療センターで2001年から2008年の間にラジオ波焼灼療法 (RFA) で治療した肝細胞癌患者287例のうち,腫瘍径3cm超で治療した71例 (25%) を検討した.このうちJIS分類4点の3例と遠隔転移を合併した2例を除外した66例 (新患58例,再発8例) を対象に解析した.解析した項目は背景因子,腫瘍因子および予後因子.また2007年以降に使用できるようになったソナゾイド造影超音波 (17例) の併用効果についても検討した.
【結果】
治療した66例のうち分けは男性45例,女性21例,感染ウイルスはHCV55例,HBV6例,腫瘍径は平均4cm (31-63 mm),中央値3.7 cm,単発例31例,多発例35例,腫瘍病期2期31例,3期35例,血清AFP中央値 35 ng/ml (範囲3-91000),血清DCP値 140 AU/L (範囲9-5570),Child-Pugh分類 A46例,B20例,JIS分類1期25例,2期29例,3期12例,またミラノ基準内24例,基準外42例と6割がミラノ基準を超えた症例が治療対象であった.治療は肝動脈塞栓術 (TAE) 併用RFA54例,RFA単独治療12例であった.治療成績は症例全体で3年生存率60%,5年生存率28%であった.またJISスコア分類別ではJIS1期,2期,3期での生存率はそれぞれ3年生存率74%,55%,39%であり,5年生存率33%,20%,29%であった.しかし症例数も少ないので腫瘍病期 (2期,3期),Child-Pugh分類 (A,B),JIS分類で予後に有意差は認め無かった.さらにソナゾイド造影超音波がRFA治療支援に使えるようになった2007年以来17例の症例に造影超音波支援によるRFAをおこなった.治療前AFP値400 ng/ml以上,治療前DCP値400AU/L以上の症例にしぼって治療後の腫瘍マーカー低下率を検討したところ,血清AFP値では2006年以前の低下率81% (5例) から2007年以降は98% (5例),血清DCP値では低下率88%(12例)から97%(8例)と低下率が改善し,造影超音波による治療支援が有用であることが示唆された.
【結論】
腫瘍径3cm以下の結節型肝細胞癌で非切除例に対する超音波ガイド下のRFAは,高い治療効果から根治治療と評価されている.一方,3cm超の肝細胞癌にはTAEが推奨治療とされるが,最近のソナゾイド造影超音波により治療支援すれば,TAE後の血流遺残部位の同定は確実で,TAE併用RFAにより治療効果と予後の改善が得られることが予想される.今後は多施設による無作為比較試験での証明が望まれる.