Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

パネルディスカッション
パネルディスカッション13
ソノグラファーのレポート: どこまで診断しどこまで書くべきか

(S246)

ソノグラファーのレポート: どこまで書くべきか

Sonographer’s report

佐藤 洋

Hiroshi SATO

関西電力病院 臨床検査部

Department of Clinical Laboratory, kyoto University Hospital

キーワード :

【序言】
私は,昨年の第82回日本超音波医学会(臨床医が求める検査報告書の書き方)と第34回日本超音波検査学会(どこまで書く?技師の記入する超音波検査報告書)において超音波報告書作成についてのジョイントセッション(パネルディスカッション)を企画した.そこで報告書作成に関わる問題点が多くあることが明らかとなった.
【超音波検査に関わる法律】
“超音波診断装置の使用に関する社団法人 日本超音波医学会の見解”(平成14 年9 月)の中では,「ヒトに対して医療上の業務に超音波検査ができるのは,医師,臨床検査技師,診療放射線技師および看護師・准看護師の業務として法的に認められている業種に限定される」とされ,また“臨床検査技師,衛生検査技師等に関する法律”では,臨床検査技師は「医師の指示の下に」超音波検査を行うとしており,さらに「検査の正確性及び検査を受ける者の安全を確保するため,できる限り医師の具体的な指示を直接受けて行なわれるよう努めること」とも記載されている.医療行為としての安全性や,超音波検査の正確性について改めて喚起を促す見解や法律で順守しなければならないが,超音波検査士が具体的にどの範囲,どの領域まで検査し,どのような内容の報告書まで作成して良いか触れられていない.
【少ない超音波専門医と数多い超音波検査士】
超音波専門医数は全領域で1684名(2009年)しかいない現状で,超音波検査士有資格者は1万人を超える(2009年)までになった.この超音波専門医数と超音波検査士の数の大きな差異は,超音波検査は需要の多い検査であるにもかかわらず,超音波専門医不在の状況で超音波検査士が超音波検査を実施し,さらに検査報告書を作成している施設が多い実態を表すものである.こういった現実に対して,報告書作成にあたり本来あるべき姿と,実際にどのように対処するのかを明らかにする必要がある.
【所見と診断名】
超音波検査報告書は,“所見”と“診断名”が存在する構造になっている.検査によって得られた所見から最終的に超音波診断が導きだされるものである.診断行為は,一種の医療行為であるので医師が担当しなければならない.超音波所見記載,診断名記載といった一連の流れは,超音波検査士と超音波専門医が同一機関に在籍する場合は問題無い.しかしながら,前述のごとく多くの医療機関では超音波専門医不在の状態では,主治医ないしは検査担当医が診断しているか,検査担当者名が超音波検査士名のみで,超音波診断医名が存在しない状態で報告されている医療機関もあるが,超音波診断名を超音波検査士が記入したとしても,それは完全な報告書でなく,最終的に検査担当医師や主治医が,診断者名を記入して初めて完全な報告書になるものである.
【臨床医と超音波検査士の関係】
報告書をどのレベルまで記載して良いかについては,超音波検査士に多くを求めない医師もいれば,考慮される病名や,経過観察時期や他の推奨される検査の記載を求める医師もいる.そのために施設内での報告書記載レベルについて取り決めが必要である.また施設内での報告書記載の取り決めの指標となるような学会主導の報告書作成に関するガイドラインがあれば,臨床現場での混乱がなくなるのではないか思われる.
【超音波検査報告書作成に関わる指針の必要性】
日本超音波医学会では,超音波検査報告書にかかわる実態調査をしていただき,超音波検査士,超音波専門医,超音波専門医以外の医師や主治医などの立場の人間が超音波検査報告書作成にどのように関わるべきか指針を明示していただきたいと思う.本パネルディスカッションがそのスタートとなれば嬉しい.