井内 新, 水口 幸生, 大石 佳史, 大木 崇

Arata IUCHI, Yukio MIZUGUCHI, Yoshifumi OISHI, Takashi OKI

国立病院機構東徳島病院循環器内科

National Hospital Organization Higashitokushima National Hospital, Cardiovascular Section

キーワード :

【目的】
心エコー・ドップラーおよび頸動脈エコー法を用い，アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬（ARB）であるtelmisartan 投与による高血圧患者の左室と頚動脈の形態および機能異常の改善を評価することである．
【対象・方法】
未治療高血圧症35例を対象とした．Telmisartan（20-40mg/日）を1年間投与した．心エコー・ドップラーおよび頸動脈エコー検査は投与後1〜2カ月で血圧が正常化した時点（phaseⅠ）と投与後1年 （phaseⅡ）に行った．
【結果・考察】
PhaseⅡではphaseⅠに比べて，1）僧帽弁口血流速波形のE波の減速時間と等容拡張時間の有意な短縮，僧帽弁輪運動速波形（MAMV）の拡張早期波高（e’）と長軸，円周および重心方向における拡張早期peak strain rateの有意な増大を認めた．以上の所見は，左室の弛緩（relaxation）の改善を示唆する．2）MAMVの収縮早期波高（S1）と3方向全ての収縮期peak strain，および長軸，円周方向の収縮期peak strain rateの有意な増大を認めた．以上の所見は左室の収縮能（contractility）の改善を示唆する．3）左室心筋重量係数，相対的壁厚および左房容積の有意な減少を認めた．以上の所見は，左室・左房における形態異常の改善を示唆する．4）左室の捻れ（torsion）の著明な減少を認めた．Torsionは左室相対的壁厚と有意な正相関がみられたが，左室心筋重量とは有意な相関を認めなかった．以上の所見は，torsionが求心性肥大と心内膜側心筋の線維化に規定されることを示唆する．5）頚動脈の内・中膜厚とstiffness係数の有意な減少を認めた．以上の所見は，頚動脈の形態・機能異常の改善を示唆する．
【結論】
心エコー・ドップラーおよび頸動脈エコー法は，高血圧症におけるARB（telmisartan）の左室心筋・頚動脈修復効果の判定に役立つと考えられた．