Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

パネルディスカッション
パネルディスカッション12
実地に役立つ心エコー

(S241)

成人先天性心疾患の心エコー

Echocardiograpgy for adult congenital heart disease

富松 宏文, 梶村 いちげ, 稲井 憲人, 清水 美妃子, 稲井 慶, 篠原 徳子, 山村 英司, 中西 敏雄

Hirofumi TOMIMATSU, Ichige KAJIMURA, Norihito INAI, Mikiko SHIMIZU, Kei INAI, Tokuko SHINOHARA, Hideshi YAMAMURA, Toshio NAKANISHI

東京女子医科大学循環器小児科

Department of Pediatric Cardiology, Tokyo Women’s Medical University

キーワード :

【背景】
先天性心疾患(CHD)の多くが手術成績の向上に伴い成人期に達することが多くなってきており,成人CHD患者はすでに40万人に達している.この現状ではCHDの心エコー検査の知識は内科医・検査技師にとっても必要なものになっていると考えられる.われわれ小児科医が行う心エコー検査は未診断のCHDの診断を行い,手術適応や方法を決定していくために行うことが多く,そのためのアプローチの手順を用いて診断している(区分診断法など).しかし,CHDの心エコー検査に馴染みのない内科医や検査技師が成人CHD患者の心エコー検査を行う場合には,すでに診断がなされていたり,手術が試行されていたりすることが多い.したがって成人CHDの心エコー検査を行う時には小児科医と同じ発想が必ずしも必要ではないことが予想される.これまで,CHDの心エコー検査について小児科医と内科医・検査技師との間でディスカッションを行うと,小児科医が行っている診断的アプローチを一方的に押し付ける形となることが多いことが,理解を得られにくくしていたことの一因と考えられる.
【目的】
成人CHDの心エコー検査の考え方を整理する.
【対象,方法】
循環器小児科で心エコー検査を行った成人CHDを対象とし,その内訳を分類し,エコー検査を施行する時の考え方を検討した.
【結果】
成人期まで生存しているCHD患者の内訳としては,1.基本的に二心室血行動態が成立しているもの,2.単心室修復がされているもの,3.未手術や,姑息手術で終わっているものなど,の3つに大別して考えるとわかりやすい.1.の場合が最も多く,基本的な考え方は通常の心臓と変わらず,弁機能,心室機能,肺高血圧などを評価する.一例として心内奇形を伴わない修正大血管は成人期に達してから心不全を呈して発見される疾患の代表であるが,この場合は体心室の機能低下と体心室側房室弁の閉鎖不全が血行動態的問題の基本である.これを心エコーで見るとき,大動脈へ駆出している心室の機能がどうか?その心室に付属する房室弁機能がどうか?について評価すればいいことになる.次にその機能不全の原因を考えるときに修正大血管の特徴として,心室機能の低下の原因としては本来低圧で働く右室が体心室として働いてきたこと,さらに房室弁機能不全の原因として本来低圧で機能するべき三尖弁が体血圧をささえていること,を考える.このようにCHDであっても,正常構築の心臓と同様に,心エコーで心室機能,弁(房室弁,半月弁)機能をまず評価し,ついでその機能不全の原因を考えるときにCHDの特徴を念頭に置くという順番で考えれば理解しやすいことが多い.2.はいわゆるフォンタン手術であり,体循環から還流した静脈血は心室のポンプ機能を用いずに静脈圧によって肺動脈へ送り込まれる.したがって,ポンプ機能を持つのは大動脈に駆出する心室のみであり,その心室機能の評価,また,高い中心静脈圧が慢性に持続していることが問題となる.この場合も,心エコーでは心室機能の評価,弁機能の評価を行うこととなる.3.では弁機能や心室機能の異常が問題である場合,さらにそれらに加え心内外で右左/左右短絡が存在していることが問題となる.この場合は有意なチアノーゼがあることが多く,心エコーでの評価は心室機能,弁機能に加え短絡の部位を考えることになる.
【結語】
CHDであっても,成人期にまで到達している患者の多くに対しては,はじめは正常構築の心臓の評価と同様な考え方で検査を行うことが可能であると考えられる.