Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

パネルディスカッション
パネルディスカッション10
循環器領域の若手医師・検査技師をどのように育成するか

(S235)

若手医師・技師育成のための地域の教育活動の意義

Role of Community-based Educational Activities for Development of Younger Doctors and Sonographers

高野 真澄

Masumi TAKANO

福島県立医科大学循環器・血液内科学講座

Department of Cardiology and Hematology, Fukushima Medical University

キーワード :

 福島県における循環器診療において,多くの循環器医師が心エコーの重要性を認識しながらも,心エコー以外の検査や診療に従事することに重点が置かれてきた時代があった.一方,各病院の検査技師は日常検査として心エコー検査を行っていても,新たな技術や知識の習得をする機会にあまり恵まれていなかった.福島県は四国に匹敵する広さを有し,新幹線沿線以外の地域から主要都市へ勉強のため出かけることは時間的・金銭的に幾分の努力が必要であることもその理由としてあげられると思う.
 それでは,心エコーに対するモチベーションを保ち,知識欲を満たすための研究会や勉強会が身近にあれば良いのではないか.それが地域における心エコーのレベルアップにつながり,ひいては循環器診療全体に貢献できると考え,循環器科医師と検査技師が一体となって参加する形の研究会を立ち上げることとした.
 その手始めとして,2002年から“ふくしま心エコー研究会”を開催しており,福島県全域とその近隣の医療従事者を対象としている.本研究会は年に2回行い,春は主として検査技師による症例発表,および著明な先生方による特別講演をいただくという形式をとっている.秋は検査法に対するミニレクチャーとハンズオンを行っており,日々の検査の中で実際にどこをどう測定したらいいのか,などの疑問を解消していく努力をしている.これにより,日常検査においても病態をよく考える必要性を再認識し,心エコーの魅力に取り憑かれた人たちが毎回130-140名程度参加している.
 また福島医大では,以前は循環器科医師だけが心エコー検査を行っていたが,2003年から検査部心エコー室において循環器科医師と検査技師(超音波検査士4名)が協力し合って検査を行う体制とした.検査技師をゼロから育成するためには勉強会や実習など若干の努力と時間を要した.しかし現在,技師に対して医師が全幅の信頼を置くまで成長し,また必要な知識などは随時伝えることにより知識と情報の共有を図っている.さらに技師も若手医師育成の強力な助っ人となっており,もはやお互いなくてはならない存在である.また,近隣施設からの技師の心エコー研修(半年〜1年の週1回コース)も受け入れており,これまで10人が研修を行っている.
 このような中で,エコー検査におけるちょっとしたコツや,疾患の診かたをもっと勉強したいという声が上がり,2006年から福島県北の技師会が中心になり,月1回の勉強会“光が丘心エコー症例検討会”を始めた.光が丘は福島医大の所在地であり,大学の若手医師と近隣の検査技師が毎回40名程度集まっている.この勉強会では,毎回一つのテーマに沿って疾患の考え方や検査時に注意すべき点などをミニレクチャーし,関連した症例提示を行っている.さらに,各施設で行った心エコー画像を持ち寄り,エコー所見の読み方や追加で必要な検査などについて検討する場となっている.
 勉強会などの継続は努力を要するときもある.しかしそれ以上に,時には気持ちが萎えてしまうときがあったとしても,同じ志を持つ仲間達と行動をともにすることにより目標を高く掲げることが出来るのではないか.そして何よりも,自分自身が常におもしろいと感じ,新しいことにチャレンジしていく姿勢を同僚・後輩医師や技師に伝えられれば,それが後進の育成につながるのではないかと考えている.私の夢は,多くの仲間達と共に地域全体がおおきく育っていくことである.