Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

パネルディスカッション
パネルディスカッション10
循環器領域の若手医師・検査技師をどのように育成するか

(S234)

臨床現場の中で技師が後進を育成する工夫

Device that cardiac sonographer promotes junior on clinical site

戸出 浩之

Hiroyuki TOIDE

群馬県立心臓血管センター技術部

Department of Cardiovascular Echo Laboratory, Gunma Prefectural Cardiovascular Center

キーワード :

心エコー検査は,現在の循環器医療のあらゆる場面において,必要不可欠な必須検査に位置づけられている.胸痛や息切れなどの症状・心雑音などの異常理学所見の原因検索,心不全患者の状態把握・治療方針の決定・治療効果判定,弁膜疾患の手術適応時期や術式決定など,あらゆる場面で心エコーが利用されている.その結果,各施設において心エコー検査件数は著しく増加し,それに対応するため,多くの心エコー検査室で若手技師の育成が重要かつ急務の課題となっている.ここでは,臨床現場の中で技師が後進を育成する工夫について考えてみたい.
【心エコーに携わる技師が習得すべきもの】
心エコーに携わる技師は,走査技術はもちろん,多岐にわたる知識の習得が必要である.①走査技術;探触子を胸壁にあてて断面を描出することは検査の基本中の基本である.この基本を習得するためには,先輩の教えや研修会で見聞きしたことを,同僚の胸を借りて反復練習する以外に近道はない.②装置の取り扱い;装置の性能を最大限に引き出すためには各装置の扱いに習熟しておく必要がある.③解剖学;心エコーは,胸壁から超音波ビームを入射しポイントとなる標的を捉えながら心臓の全体像を把握する検査であり,心内腔や弁,血管などの位置関係や名称などをしっかり理解しておく必要がある.解剖学は教科書だけの知識では限界があり,手術室やカテ室の治療の場や剖検室などへ出向いての積極的な知識習得が効果的である.④病態生理;心エコー検査を進める上で,各疾患の病態生理の知識は必須である.心エコーは検査で得られる壁動態や血行動態から圧動態などを推測し,それに付随する心エコー情報の収集を行う.これにより正確な心エコー診断に導いていくことがこの検査の真髄であり,これらは確かな病態生理の知識に基づいて行われる.⑤循環器診療の総合的知識;心エコーの知識だけなく心電図をはじめ胸部レントゲン,心臓カテーテル検査などの他のモダリティを理解し,心エコー検査に活かすことが,検査の精度に大きく影響する.さらに,外科手術の術式や内科的治療法を理解していることが付加価値のある検査データやレポートを生み出す基本知識となる.
【教育カリキュラムの設定】
多くの新人技師は超音波検査に多大な関心をもって入職してくる.その興味や向上心を挫けさせることなく,心エコー検査を習得させ,優れたソノグラファーを育てるためには,成果の見えるカリキュラムと目標設定が重要である.当センターでは,以下のような1年間の基本スケジュールを設け,各段階での成果を検証しながら訓練を続けている.①0〜3ヶ月;先輩技師の検査の見学にあて,この時期に良い断面を眼で覚えさせる.同僚などの胸を借り探触子走査や装置の基本的操作を習得する.②4〜6ヶ月;先輩の検査の前や後に患者に探触子をあて,種々のバリエーションとその対応方法を学ぶ.③7〜9ヶ月;大きな病変のない患者の検査を行い,実際の検査の感覚と責任感を養う.④10〜12ヶ月;病変のある患者の検査を行い経験を積む.7ヶ月以降に自分で行った検査は,全例で記述式のレポートを書き,指導技師の添削を受ける.記述式のレポートを書くことは,本人の知識の整理のためにたいへん有効な方法であるし,検査の完成度や病態の理解を検証するよい材料になる.
【おわりに】
以上,臨床現場での後進の育成について述べたが,やはり最後は経験に勝るものはないと考えている.自身の行う検査はもちろん,先輩技師の検査を見学し,学会や研修会などの積極的に参加し,より効率的に経験を蓄積することが重要である.