Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

パネルディスカッション
パネルディスカッション10
循環器領域の若手医師・検査技師をどのように育成するか

(S234)

効率的な検査技師/医師の養成-頸動脈超音波教育の意義-

An Effective Education Procedure for Doctors and Clinical Technicians: A Educative significance of Carotid Artery Ultrasound

前田 英明, 澤辺 美智子, 関口 ひろ子, 西森 香代

Hideaki MAEDA, Michiko SAWABE, Hiroko SEKIGUCHI, Kayo NISHIMORI

日本大学医学部附属板橋病院超音波室, 血管外科

Associate Prof, Nihon University School of Medicine Itabashi Hospital

キーワード :

【目的】
増加する超音波検査数に対応するため,検査技師の養成は急務である.また,平行して初期臨床研修医の超音波検査へのガイダンスも行わなければならない.多忙を極める初期臨床研修医・臨床検査技師を現実的に効率的に養成するため,検査部位別症例数の推移を検討し,最も検査依頼が多く,かつ短時間で教育効果の高い,部位を選択し,養成を開始した.
【対象と方法】
2003年から2009年の間日大板橋病院超音波室で行われた検査症例総数は2003年14,449例 2009年17,273例と年々増加傾向にある.部位別に見ると,腹部内蔵は2003年8,979例から2009年7,617例へと減少傾向にあった.16例,320列のMDCTがあいついで同時期に導入され,短時間,少ない造影剤で超音波検査の強みである,実質臓器への診断が超音波検査にとって代わられた結果と推察される.一方,末梢血管系は同様に542例から792例,頚動脈591から1,251例と倍増した.また,乳腺・甲状腺も4,151例から7,617例と同様に大幅増加した.現在の超音波検査の需要の動向はかつて主役で会った腹部内蔵から,血管,乳腺の体表系に推移していることが判明した.かつて初期臨床研修医,検査技師の超音波検査修練の開始は,腹部内蔵部位からが一般的であったが,技師にとって解剖学的な知識の習得,患者の体型等の悪条件のため,技術習得まで,時間を要した.初期臨床研修医も超音波検査修練の希望者が多いにもかかわらず,所属科の時間制約のため,十分な時間が取れないのが現状であった.
【結果】
2007年から技師の養成は依頼件数の大幅な増加を示す頚動脈超音波検査からの修練開始とした.理由は,1解剖学的に複雑でなく,技師に早期に理解が得られる.2患者の状態に左右されず,一定の描出が可能である.3決められた部位での計測が指定され,報告書の作成が比較的容易である.ことであった.座学から臨床現場へのdebutまでの教育計画を作成した.本年4月入職した22歳の新人技師の教育過程を説明する.まず,シラバスの作成に取り掛かった.GIO:頚動脈病変の超音波検査スクリーニング法を習得する.SBO:日本超音波医学会認定検査士ガイドラインを参考にし,23項目作成した.本シラバスに準じ,超音波の基礎講義を2時間行い,続いて,頚動脈の解剖,病態生理,計測部位と計測法の臨床意義について2時間の講義を行った.頚動脈超音波検査の意義,すなわち,臨床医はどのような情報を知りたがっているかに重点をおいて説明した.座学4時間の後,20名のボランティアに対して,検査を行い,報告書を作成.終了後,専任技師2名,室長の合計3名で臨床実地試験を行った.20例のボランティアでの修練はlearning curveがplateauに達するには最低でも20例が必要との著者の血管外科医としての経験からであった.なお,ボランティアのほとんどは医学部臨床実習中の20代の男女にお願いした.
【結語】
頚動脈検査技術習得後に乳腺,甲状腺,腹部の順で修練を行うと,頚動脈検査に配備されることにより,手の空いた認定検査技師から次の乳腺さらに腹部検査の指導が受けられ,より短時間で総合的な検査技師養成が可能であると確信した.また,一時期1ヶ月に及ぶ予約待ちを出した頚動脈検査を即日検査可能にまで改善し,患者サービス向上に貢献できた.