Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

パネルディスカッション
パネルディスカッション9
超音波内視鏡の新展開

(S230)

超音波内視鏡ガイド下胆道ドレナージの現況と今後の展開

Current status and future evolution of EUS-guided Biliary duct drainage

肱岡 範1, 原 一生1, 澤木 明1, 河合 宏紀2, 丹羽 康正2, 山雄 健次1

Susumu HIJIOKA1, Kazuo HARA1, Akira SAWAKI1, Hiroki KAWAI2, Yasumasa NIWA2, Kenji YAMAO1

1愛知県がんセンター中央病院消化器内科, 2愛知県がんセンター中央病院内視鏡部

1Gastroenterology, Aichi Cancer Hospital, 2Endoscopy, Aichi Cancer Hospital

キーワード :

【背景と目的】
超音波内視鏡下穿刺術を用いた技術は,さまざまな治療へも応用されるようになった.この中で閉塞性黄疸患者に対する減黄術としての超音波内視鏡ガイド下胆道ドレナージ術は近年とくに注目されている手技の一つである.われわれは2003年以降,切除不能悪性胆管狭窄に対してこの手技を施行しており,今回その治療成績につき報告する.
【対象】
2003年9月から2009年12月までに悪性胆道狭窄に対して超音波内視鏡ガイド下胆道ドレナージを行った41例を対象とした.原疾患は膵癌29例,消化器癌のリンパ節転移5例,胆道癌4例,転移性肝腫瘍1例,肝細胞癌1例,胆管細胞癌1例であった.男女比は20:21,平均年齢は67歳(43-85歳)であった.
【方法】
電子コンベックス型超音波内視鏡(GF-UCT240 ; Olympus)を超音波診断装置(ProSound α10; Aloka)に接続して観察した.アクセスルートとして,経十二指腸を33例,経胃を5例,経食道を2例,経小腸を1例に用いた.中下部胆管狭窄に対しては,経十二指腸経由である超音波内視鏡下胆管十二指腸吻合術(EUS-CDS)を第一選択とした.その他は,胆管狭窄の部位,胃切除術の有無,病態に応じてアクセスルートを適宜変更した.EUS-CDSを行う場合,通常は22GのFNA針(NA-200H; Olympus)にて十二指腸球部より胆管を穿刺造影後,通電針 (Zimmon Needle Knife; Wilson-Cook)にて胆管を再穿刺しガイドワイヤー (GW) (JagwireTM; BostonScientific )を胆管内へ誘導,また経胃/経食道をアクセルルートとする場合には,19GFNA針(ECHOTIP ULTRA; Wilson-Cook)で胆管を穿刺造影後,GWを胆管内へ誘導した.その後,穿刺部を拡張バルーンやテーパードカテーテル (Soehendra Biliary Dilatation Catheters ; Wilson-Cook) にて拡張しplastic stent (RX Plastic Biliary Stents; BostonScientific)またはmetal stent(Niti-S ComVi; Taewoong Medical)を留置した.経食道穿刺の1例はランデブー法を用いて経乳頭的にplastic stentを留置した.
【成績】
手技は41例中39例(95.1%)で成功した.不成功の2例は,経十二指腸経由で1例,経胃経由で1例に認めた.不成功の理由は,それぞれ,経十二指腸の症例は胆管穿刺時に血清胆汁の逆流を認めたため,経胃経由の症例は,GWのトラブルのため手技を中止した.手技に伴う合併症は,軽度の腹痛を5例(12%),出血を2例(4%),ステント迷入を1例(2%)に認めた.Grade 3以上の合併症は出血の1例のみであった.手技が成功した39例中37例で良好な減黄が得られた.ステントの平均開存期間は110日(4-805日)で,経過中に閉塞を26例,脱落を1例に認めたが,26例中21例(80.7%)で再留置が可能であった.
【結語】
超音波内視鏡ガイド下胆道ドレナージは比較的安全かつ有効な手技である.今後,手技に特化したデバイスが開発され,手技が標準化されることにより,PTBDやEBDの一部に替わりうるドレナージ法として悪性腫瘍患者の診療に大きく寄与すると考えられる.