荒木 正雄¹, 木田 光広², 宮澤 志朗², 岩井 知久², 菊地 秀彦², 竹澤 三代子², 今泉 弘², 小泉 和三郎²

Masao ARAKI¹, Mitsuhiro KIDA², Siro MIYAZAWA², Tomohisa IWAI², Hidehiko KIKUCHI², Miyoko TAKEZAWA², Hirosi IMAIZUMI², Wasaburo KOIZUMI²

¹相模原協同病院消化器病センター内科, ²北里大学東病院消化器内科

¹Gastroenterology, sagamihara kyodo hospital, ²Gastroenterology, Kitasato univercity east hospital

キーワード :

超音波内視鏡下穿刺術（EUS-FNA）は診断・治療の両面で消化器疾患領域において欠くことのできない手技として普及している．これまでにも機器・穿刺針の開発や改良，手技の工夫によりその診断精度や治療成績も向上している．今回，直視型の穿刺用コンベックススコープを使用する機会を得たのでその成績につき報告する．直視型コンベックススコープを用いてEUS-FNAを施行した38例を対象とした．内訳は診断31例，治療7例である．診断では膵癌化学療法前12例，膵腫瘍診断5例，粘膜下腫瘍4例，リンパ節診断4例，腫瘤形成性膵炎2例，胆嚢癌1例などがある．治療では膵仮性嚢胞ドレナージ5例，胆道ドレナージ1例，腹腔神経叢ブロック1例である．直視型コンベックススコープの仕様は以下の通りである．光学系では視野方向0度で視野角は120度と広角になっている．挿入部は先端外径14.2mm，軟性部外径11.8mmと細径化されている．逆に鉗子孔チャンネル径は3.7mmと拡大され，湾曲角はUPが180度，DOWNが100度と広くなり，左右角も100度と広角になった．直視型のため鉗子起上装置はないが，副水機能はある．超音波機能ではバルーンはなく，走査角が90度となっている．穿刺針は診断ではOLYMPUS社製の22G，WILSON-COOK社製の25G針を多く使用しているが，悪性リンパ腫や自己免疫性膵炎を疑う場合はWILSON-COOK社製の19G針を使用している．治療では仮性嚢胞に対しては19G針を使用している．
【成績】
診断目的では検体採取率100％，診断率87.1％であった．膵癌化学療法前では診断率83.3％（10/12例）であった．確定診断に至らなかった1例は後日UC2000Pにて穿刺し確定診断となった．膵内分泌腫瘍，悪性リンパ腫は診断率50％であったが，同一症例であり，2回目の穿刺で確定診断が得られた．膵腫瘍は80％（4/5例），粘膜下腫瘍は100％（4/4例），リンパ節は100％（4/4例）であった．膵仮性嚢胞ドレナージでは従来機種では穿刺に力が必要であったが，直視型では力が伝わりやすく穿刺が容易であった．また大きな合併症は認められなかった．直視型コンベックススコープはその操作性，特に従来機種で穿刺が困難であった膵鈎部病変や膵仮性嚢胞ドレナージの穿刺の際に従来機種に比し有用であると考えられ，今後，これらの症例の穿刺の際のスコープの選択肢になりうると考えられた．