Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

パネルディスカッション
パネルディスカッション9
超音波内視鏡の新展開

(S228)

消化器疾患におけるInterventional EUSの現在と未来

The role of interventional EUS for GI disease -current status and future

鈴木 玲1, 入澤 篤志2, 高木 忠之1, 池田 恒彦1, 大平 弘正1

Rei SUZUKI1, Atsushi IRISAWA2, Tadayuki TAKAGI1, Tsunehiko IKEDA1, Hiromasa OHIRA1

1福島県立医科大学医学部消化器・リウマチ膠原病内科学講座, 2福島県立医科大学 会津医療センター準備室

1Department of Gastroenterology and Rheumatology, Divison of Medicine, Fukushima Mecical University School of Medicine, 2Preparatory Office for Aizu Medical Center (Gastroenterology), Fukushima Medical University School of Medicine

キーワード :

【目的】
消化器診療におけるInterventional EUSの位置づけをretrospectiveに検討する.また,プロトタイプ直視型コンベックス式EUSによるInterventional EUSの使用経験から,EUS機器の選択についても検討する.
【対象と方法】
1)2001年1月から2009年12月までの当院におけるInterventional EUSの成績(のべ744件)を解析し,膵腫瘍,消化管粘膜下病変,膵仮性嚢胞・膿瘍における位置づけを検討した.2)直視型コンベックス式EUSを用いてInterventional EUSを施行した24例について,その成績を解析した.
【結果】
1)診断的Interventional EUS:①膵腫瘍;237例でEUS-FNAを施行し,正診率は96.6%であった.病期診断にも有用であり,EUS下腹水穿刺を施行された8例中の4例は癌性腹膜炎と診断され,不要な手術が回避された.その高い診断能と安全性から,現在では,閉塞性黄疸でERCP下ドレナージを可及的速やかに施行する症例以外では,膵腫瘍の確定診断の第1選択と位置づけている.また,切除不能膵癌では,2002年9月からFNA検体を用いた抗癌剤感受性試験を31例で施行して治療に応用している.②消化管粘膜下病変;118例でEUS-FNAを施行し,正診率91.4%であった.15mm以上の粘膜下腫瘍(SMT)でEUS-FNAは可能であった.SMTはGISTか否かで治療方針が異なるため,穿刺可能な大きさのSMTであれば積極的にEUS-FNAを施行する.2)治療的Interventional EUS:①膵腫瘍;化学療法に効果が乏しい症例に対して,腫瘍内への樹状細胞局注療法を7例で施行した.抗癌剤無効例であっても平均9.9カ月の予後が得られ,新しい癌治療の可能性が示唆された.癌性疼痛に対してEUS-CPNを23例で施行し78.6%で有効であった.特に問題となる偶発症はなく,切除不能膵癌であればFNA施行時に一期的にCPNも施行するのが望ましいと考えられた.②膵仮性嚢胞・膿瘍に対するEUS下経消化管的ドレナージは42例で施行し,手技成功率100%,嚢胞の完全消失率96.6%であった.嚢胞が消失しなかった1例は,胃壁との癒着がない慢性膵炎による貯留嚢胞の症例であった.これらの成績から,急性膵炎後の仮性嚢胞での第1選択の治療法と位置付けられる.また,壊死性嚢胞・膿瘍では消化管と嚢胞との腔を大型バルーンで拡張し嚢胞内に内視鏡を挿入して洗浄・壊死物質の除去も有用であった.3)直視型コンベックス式EUSの経験;プロトタイプ直視型コンベックス式EUSを用い,EUS-FNA20例,EUS-BD2例,膵仮性嚢胞に対するEUS下経消化管ドレナージ2例を施行した.EUS-FNAに際しては,通常コンベックス型内視鏡と同様に施行出来た.EUS-BDや嚢胞ドレナージに際しては,穿刺部を直視しデバイスへトルクを直達できるため,通常型コンベックスと比較して手技が容易であった.経胃・経十二指腸球部穿刺での診断および治療的穿刺において第一選択機器となりえると思われた.
【結論】
Interventional EUSは,膵腫瘍やSMT診断の第一選択となりえる.また,今後さらなる治療への応用が期待できる手技と考えられる.