Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

パネルディスカッション
パネルディスカッション9
超音波内視鏡の新展開

(S227)

膵疾患の診断における電子ラジアル型超音波内視鏡の有用性と新展開

Value and recent advances in Electrical-radial type Echoendoscopy (ER-EUS) for the diagnosis of pancreatic disorders

長川 達哉, 宮川 宏之

Tatsuya NAGAKAWA, Hiroyuki MIYAKAWA

JA北海道厚生連札幌厚生病院第2消化器科

Second Department of Gastroenterology, Sapporo Kohsei Hospital

キーワード :

【背景】
電子ラジアル型超音波内視鏡(以下ER-EUS)は2002年に臨床応用されて以来,観測装置のフルデジタル化(S/N比の向上による画質改善),多機能化(3D-image,Real-time tissue Elastographyの導入),内視鏡機器の改良(360°走査可能な探触子配列)などの技術導入が継続的に行われ,次世代超音波内視鏡システムとして長足の進歩を遂げている.今回は膵疾患の診断におけるER-EUSの有用性を以下の3項目につき検討した.
【対象および方法】
2002年7月から2009年6月までの約7年間にスクリーニングあるいは精査目的にてER-EUSを施行した膵疾患150例.なお使用機種はPentax社製EG-3630UR,EG-3670URK(内視鏡機器,最大走査角度はそれぞれ270°, 360°), Hitachi-medico社製EUB-8500, EUB-7500(観測装置)である.全例,内視鏡を十二指腸下行脚まで挿入し,口側へ引き戻しながらバルーン法にて膵臓をB-mode観察し,腫瘤性病変が描出された場合にはCDI(LevovistあるいはSonazoid併用)やReal-time tissue Elastographyによる観察を追加した.
【膵疾患のスクリーニングにおける有用性】
メカニカルラジアル型超音波内視鏡(以下MR-EUS)の画像と対比可能な56例を対象とした.MR-EUSを先に施行した40例中,ER-EUSにて新たに発見された異常所見は4例(膵嚢胞3例,膵内分泌腫瘍1例)であった.画像の判定ではER-EUS画像がMR-EUS画像より優れていた症例が71%(40/56),同等とされた症例が29%(16/56)であった.画質の向上の理由としては振動子近傍に見られる多重エコーの軽減(50/56,89%)と空間分解能の向上(48/56,86%)が挙げられた.
【膵小腫瘤性病変の診断における有用性】
ER-EUSを施行した最大径15mm以下の腫瘤性病変16例を対象とした.平均腫瘍径は9.4mm (5〜14mm)であった.鑑別診断の検討ではMR-EUSを同時に施行した8例(50%)において病変の境界や辺縁の明瞭化など画像の改善により質的診断が容易となった.またCDI/PDIの併用により,膵管癌3例を除く13例(81%)に血流信号が表示され,内分泌腫瘍や動静脈奇形では病変の中心部に豊富な血流が観察された.Levovistによる造影後は腫瘤形成性膵炎の2例を除く14例(88%)において周囲膵実質とのコントラストが鮮明となり,浸潤性膵管癌はhypovascular tumor,内分泌腫瘍はhypervascular tumorとして認識された.動静脈奇形では腫瘤様に観察されたnidusよりも広汎にhypervascular areaが拡大し,血管性病変の特徴を反映していた.
【Real-time tissue Elastographyによる膵疾患診断の試み】
膵疾患18例を対象に組織弾性イメージングを施行した.膵管癌4例では青色の表示が得られ周囲膵組織より硬度が増しており,中心部に壊死変性を伴った1例では同部位の硬度の低下が認められた.一方慢性膵炎では赤色,青色の表示が入り混じり膵実質の硬度が不均一になる傾向が見られた.また膵管癌と内分泌腫瘍の各1例ではB-mode上境界不明瞭であった腫瘤形態が硬化性病変として明瞭に描出された.
【結語】
ER-EUSは従来からのMR-EUSと比べartifactの低減と空間分解能の向上により良好なB-mode画像が得られ,膵疾患のscreeningにに有用であった.またMD-CT,MRIなど他のDiagnostic modalityより膵小腫瘤性病変を高率に指摘し得ると共に,血流動態診断を付加することにより同時に鑑別診断も可能となった.更にReal-time tissue Elastography機能により従来からの形態,血流動態診断に加え,組織弾性(硬度)の情報がリアルタイムで描出可能となり,今後の膵疾患診断の精度向上に寄与するものと考えられた.