Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

パネルディスカッション
パネルディスカッション8
CT・MRI 時代における超音波検査のあり方

(S224)

CT・MRI時代(?)の末梢血管超音波検査

Vascular Ultrasonography in the era of CT and MRI

金田 智

Satoshi KANEDA

東京都済生会中央病院放射線科

Department of Radiology, Saiseikai Central Hospital

キーワード :

【はじめに】
装置や撮像法の進歩により,下肢動脈などの末梢血管はCTやMRIで容易にしかも高精度に検査できるようになった.とくにMRIは造影剤を用いなくても検査可能であり,無侵襲性の面でも超音波検査と肩を並べる存在のように思える.このような状況において,超音波検査はどのような意義があるのであろうか.
【超音波検査,CT,MRIの利点と欠点】
超音波検査は,まったく無侵襲に血流を観察することができることが最大の利点である.また狭窄や閉塞などの形態的評価だけでなく,ドプラ波形により機能的な評価も可能である.一方,広範囲の描出ができないこと,ガスや骨の存在により,描出範囲が制約されること,検者の技術により検査の精度が大きく異なることが欠点である.CTでは造影剤を使用することによって,きわめて短時間に精度の高い動脈画像が得られるが,造影剤が禁忌の症例では検査不能である.動脈壁の石灰化が高度であると,内腔の評価が困難となる.静脈については通常の投与法では造影剤の濃度が不十分となるため,細い静脈の評価が困難である.また流れの向きについても評価できない.MRIでは,非造影でも検査可能である.空間解像度はやや劣る.石灰化が評価できない.ペースメーカー装着者など検査そのものが禁忌となる症例も少なくない.流れの向きを利用して動脈と静脈を区別して描出するため,逆流を評価することが難しい.
【末梢血管各領域におけるモダリティーの使い分け】
1)頸動脈;頭蓋内血管についてはMRIでスクリーニング,CTで精査,頚部血管については超音波検査によるスクリーニング,精査が一般的である.非造影MRIは流れの向きによって動脈と静脈を分けて撮像しているため,椎骨動脈の逆流と閉塞は区別できない.CTも順行性か逆流か区別できないため,subclavian steal syndromeの診断は困難である.2)下肢動脈;造影剤を急速注入できる症例では,容易にかつ非常に短時間に精査可能であり,ABIによるスクリーニングの次にダイナミックCTによる精査が行われることもしばしばある.MRIは非造影でも十分良好な画像が得られるが,安静を保てない場合には良い画像が得られない.超音波検査でも,適切な技術があれば外科手術あるいは血管内治療の術前の検査として十分な情報を得ることができる.3)下肢静脈;造影CTであっても膝窩静脈までの太い静脈しか評価困難であり,下腿の静脈の評価能力には劣る.MRIでも下肢静脈血栓症の評価は可能であるが,一般的ではない.静脈瘤の評価では立位による逆流の有無を確認することが重要であるが,CT,MRIとも形態的評価にとどまる.したがって下肢静脈超音波検査の価値は高い.4)透析シャント;CTは造影剤を使用しなくてはならず検査しにくい.MRIでは,動静脈の両方を一度に評価しなくてはならないため,流れのみを画像化する手法が利用しにくい.一方超音波検査はその場で簡単に皮膚面にマーキングできることから,透析シャントの画像診断としては圧倒的に優位である.5)腎動脈;超音波検査は肥満度や消化管ガスの影響を受けやすく,CTやMRIに比べると能力的には劣る.しかしスクリーニングとしての超音波検査の価値は高い.
【まとめ】
下腿の静脈や透析シャントの評価にあたって,超音波検査はCTやMRIに比べて特に有力な検査であるが,その他の領域でもスクリーニング検査としての能力はきわめて高い.無侵襲性や経済性,至急検査への即応性,診断の適切性を考えれば,今後も末梢血管領域における超音波検査の意義は極めて大きいといえるだろう.