Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

パネルディスカッション
パネルディスカッション8
CT・MRI 時代における超音波検査のあり方

(S223)

CT・MRI時代における泌尿生殖器領域の精査としての超音波

Ultrasound of uroradiology

丸上 永晃1, 平井 都始子1, 斎藤 弥穂1, 山下 奈美子1, 吉田 美鈴1, 建石 真理子1, 高橋 亜希2, 武輪 恵2, 大石 元1, 平尾 佳彦3

Nagaaki MARUGAMI1, Toshiko HIRAI1, Miho SAITO1, Namiko YAMASHITA1, Misuzu YOSHIDA1, Mariko TATEISHI1, Aki TAKAHASHI2, Megumi TAKEWA2, Hajime OHISHI1, Yoshihiko HIRAO3

1奈良県立医科大学中央内視鏡・超音波部, 2奈良県立医科大学放射線科, 3奈良県立医科大学泌尿器科

1Central endoscopy and Ultrasound, Nara Medical University, 2Radiology, Nara Medical University, 3Urology, Nara Medical University

キーワード :

【はじめに】
CT,MRIが容易に撮像できる多くの施設において,泌尿器・生殖器領域における超音波の位置付けは,尿路結石や水腎症の有無,腎腫瘍や膀胱腫瘍の拾い上げなどスクリーニング検査が中心となっている.多忙な日常診療において安易にCTやMRI検査がオーダーされることも多く,医師の超音波離れがすすみ,超音波検査が十分に生かされていないのが現状と思われる.CT,MRIは客観性,再現性に優れ,MDCTでは任意の断面表示も可能である.超音波で観察困難な肥満症例も,良好に描出され消化管ガスによる死角も無い.造影検査が必須であるが,多くの疾患が造影CTやMRIでほぼ診断は確定する.しかし,空間分解能やリアルタイム性,生理的な状況で詳細な血流情報が得られる超音波検査でしか得られない病態もある.
【1,腎血管病変】
造影CT,MRIでは腎動脈の起始部から腎門部くらいまでが良好に描出され,腎動脈狭窄の検出や複数の腎動脈の描出など有用性は高い.しかし,狭窄の程度の判定は形態のみでは難しく,治療方針の決定には狭窄部の最高血流速度や腎葉間動脈のRIなどの情報が重要である.治療後の経過観察にも,形態のみならず詳細な血流情報が得られ,特に若年者では超音波が優先される.また,腎内の腎動脈瘤や動静脈奇形はCT,MRIでは描出困難なことも多いが,空間分解能の高いカラードプラ法による異常血管の描出と血流波形から,造影剤を用いずに瞬時に診断できる.
【2,腎腫瘤性病変】
CT,MRIで多くの腫瘤性病変が診断可能であるが,濃染の有無が判断できない充実性腫瘤の鑑別診断や,良悪性の鑑別が困難な嚢胞性腫瘤の経過観察では,カラードプラ法や造影超音波による血流の確認が有用である.造影超音波は腎機能低下症例に対する造影検査にも応用可能で,透析腎に合併する腫瘍の診断などにも有用である.
【3,移植腎】
腎移植では術後合併症の確認や腎血流のモニタリング,拒絶反応の評価が重要であるが,頻回にベッドサイドで手軽に施行でき,造影剤を用いずに血流表可能な超音波が必須の診断法となっている.
【4,男性外生殖器病変】
高周波プローブを用いた超音波検査は,男性外生殖器(精巣・陰茎)の診断に威力を発揮する.すなわち,精巣捻転や精巣梗塞,精巣上体炎,停留睾丸,持続勃起などが,血流情報を含めた非常に高分解能検査のもとで診断できる.持続勃起の血管塞栓後の治療効果判定にも有用である.これらの多くの疾患が超音波のみで検査終了となり,通常CTやMRIの出番はない.特に急性陰嚢症や停留睾丸症例は小児例に多く,鎮静が必要なMRIとは違い超音波検査の優位性は高い.
【まとめ】
日常診療ではCTやMRIのみで検査が終了することも多いが,超音波検査から得られた情報を加味することが,より有益な診断,治療法の選択,治療効果判定に結びつく場合も少なくない.基本的には,超音波検査,CT,MRIは相補的な役割を担っているものと考えているが,それぞれのモダリティーの長所と短所,限界を理解し,スクリーニング検査として異常所見を拾い上げるだけでなく,精査としての超音波を精査法として活用すべきである.このためには,日頃からカラードプラ法やパルスドプラ法,さらには造影超音波法に慣れ,精査としての超音波技術を磨く努力を継続しておく必要があると考えている.