Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

パネルディスカッション
パネルディスカッション8
CT・MRI 時代における超音波検査のあり方

(S223)

肝胆膵領域精査における超音波検査の意義

Significance of minute ultrasound examinations for hepatic, biliary and pancreatic disorders

水口 安則

Yasunori MIZUGUCHI

国立がん研究センター中央病院

National Cancer Reseach Center Hospital

キーワード :

 近年,超音波診断装置はより高性能化し,空間分解能,コントラスト分解能,十分なペネトレーション,アーチファクトの軽減などが改善され,超音波の画質は一昔前に比較すると格段に向上している.このため,これまで描出困難であった小さな病変や,病変内の細かな構造を描出することができるようになり,より正確な存在診断や質的診断に役立っている.分解能のすぐれた超音波は,病変の形状や内部構造を忠実に映し出してくれるモダリティである.また,造影超音波は,病変内外の血流動態や造影剤分布を正確に表現することが可能であり,より確診度の高い鑑別診断やBモードで検出困難な病変の診断に役立っている.一方,CT・MRIの進歩・普及も著しく,より高速化・多機能化してきた.これらは客観的な画像を記録することができ,また臓器を選ばず全身の疾患に利用でき,高い診断能を発揮する.大掛かりで高価なCTやMRIは,時として患者さんや一般臨床医に超音波より優位な検査法と偏重される風潮がある. しかしながら,CTやMRIを行えば何でも診断がつくわけではない.画像診断は,それぞれの特性をよく理解し,適切に組み合わせて行う必要がある.今回は,超音波造影検査を含めて以下の項目に着目し, 肝胆膵領域における精査としての超音波検査の意義について,おもにCTと対比しながら具体的症例を呈示し報告する.
1. 空間分解能・コントラスト分解能
 超音波は最も分解能の高いモダリティと考える.通常のBモードにて, 診断に耐え得る良好な軟部組織分解能を得ることができ,組織構築像をよく反映した画像を得ることができる. 小病変の評価はthin slice CTを駆使しても困難な場合がある.
2. 血流感度
 カラードプラ(パワードプラ)を用いることによって,造影剤を使用することなく病変内外の細かな血流像やその性状を把握することが可能であり,重要な診断情報を得ることができる.造影検査では,例えばソナゾイドの1回投与量は, CTに比較して1/200以下と極めて少なく,造影開始までの時間も短い.高感度で真実に近い血流動態を知ることができると考える.造影超音波の感度は,造影CTを凌駕しており,CTHAに匹敵すると考える.
3. 実時間分解能(リアルタイム性)
 動的観察能力は他のモダリティを圧倒的に凌駕する. 呼吸性運動・心拍動性運動や体位変換による臓器間または臓器と病変の「ズレ」の有無,胆嚢ポリープなどの隆起性病変の首振り運動の有無,嚢胞状腫瘤内腔の内容物の流動性の有無,圧迫操作による形状変形の有無,消化管の蠕動運動に伴う病変の動きの有無などをリアルタイムにて容易に評価できる点は,超音波ならではの特徴であり,他のモダリティではほとんど不可能である.造影超音波では,早期相の場合,ターゲット病変を含む同一断層面にプローブを固定し撮像するため,血流動態の変化を時々刻々と観察することができ,診断に重要な造影所見を逃すことはない.一方,通常の造影CTでは,広範囲を捉えることができる反面,細かな実時間分解能を期待することは困難である.
4. 造影剤禁忌
 レボビストもソナゾイドも,禁忌または原則禁忌としていくつかの事項が挙げられている.しかし,両者とも今までに使用禁忌となった症例に遭遇しておらず,全く副作用も経験したことがない.超音波造影は,副作用出現の可能性を憂慮することなく,きわめて安全に造影検査を施行することができる.これは特筆すべき利点である.一方,CTではヨード造影剤アレルギー,腎機能不全の患者に使用できないのは周知の事実である.