Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

パネルディスカッション
パネルディスカッション7
超音波診断装置における人間工学的デザイン

(S220)

超音波診断装置のデザイン:これまでのエルゴノミクスデザインとハイエンド装置の将来展望

Design of Ultrasound Equipment: Past Ergonomics Design of Desktop Scanner and Its Future

中田 典生, 西岡 真樹子, 宮本 幸夫, 福田 国彦

Norio NAKATA, Makiko NISHIOKA, Yukio MIYAMOTO, Kunihiko FUKUDA

東京慈恵会医科大学放射線医学講座

Department of Radiology, Jikei University, School of Medicine

キーワード :

【はじめに】
近年,超音波診断装置は小型化した装置とデスクトップ型のハイエンド装置の二極化が進み,現在それぞれについて臨床的用途に応じて特化した機能が付加された装置として進化しつつある.ハイエンド装置であるデスクトップ型の装置については,Work-Related Musculoskeletal Disorders(作業関連運動器障害,以下WRMSD)と呼ばれる,腰痛や頸肩腕障害,変形性関節症,腱鞘炎,手根管症候群など,原因となる負担が労働(超音波検査)に伴う作業にあると考えられる筋肉や骨や関節などの疾病が米国を中心に問題となっている.
【これまでのエルゴノミクスデザイン】
米国では,超音波検査士のWRMSDを防止するため,デスクトップ型超音波診断装置についてSociety of Diagnostic Medical Sonography(以下SDMS)がIndustry Standards for the Prevention of Work-Related Musculoskeletal Disorders in Sonographyというガイドラインをまとめており,これに超音波ベンダーが協賛して超音波診断装置のデザインに活かされている.特に超音波診断に用いるモニタがブラウン管から液晶に変わってからは,デザインの自由度が増したため,新しい装置のデザインがエルゴノミクスを考慮したものになってきた.今回われわれの発表では,SDMSのガイドラインをおさらいしながら既存の装置についてエルゴノミクスデザインについて,復習してみることにする.
【医療分野におけるロボット化の応用の実際とその問題点】
現在,日本では医療分野において様々なロボット,例えば手術支援ロボット,介護ロボット,物流用ロボット,ロボット内視鏡,ロボットアーム付血管造影装置などが開発,研究,実用化されている.しかしながら,ロボット開発には多大なコストが必要になるため,完成したロボットの使用用途が限定されている場合は,技術的完成度が高くても商業的な成功が困難となる可能性が高いことが推測される.
【日本独自のコンセプトの提案】
現在,市場に出回っている超音波診断装置は,エルゴノミクスを考慮しているため,各ベンダーともややデザインが似通ったものになりつつある.各ベンダーが超音波診断装置の差別化を図る場合,その独自性をどのように打ち出すかが問題となる.そこで多目的に使用可能なハイエンド装置にロボットアームや強化外骨格(人間の筋力を増強するため,「着用する」という形態で運用される機械装置)を付加することにより新しいシステムを構築するコンセプトを提案する.この新しい超音波診断装置付きロボットは,介護機能や患者のベッドからの転落防止用の機能をロボットアームによる実現するだけではなく,検査中は検査士の腕を支えるような強化外骨格として作用させることのより,患者だけではなく検査士の作業の補助もしてくれるようにデザインする.また超音波検査の待機中は,液晶とスピーカーを使って,超音波検査の説明を患者に行う機能を付加する.ECGモニタを付加することにより,患者が急変した際のBLS,ACLSをスムーズに行うための補助機能をサポートする.また最終段階としては,二足歩行による階段昇降や超音波造影剤インジェクション補助,CTや血管造影装置などの室内での超音波ガイド下ないしはCTガイド下生検の遠隔操作支援などもできる多目的ロボットを開発することにより,超音波検査時間以外にも多用途で使用可能なロボットの開発をコンセプトとする.
【まとめ】
日本のロボット技術は世界的にみても最高水準にあるが,医療分野での実用化は諸外国に比して遅れをとっている.超音波診断装置の開発においても,従来のデザインの枠を超えた発想が求められていると筆者らは考える.