Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

パネルディスカッション
パネルディスカッション7
超音波診断装置における人間工学的デザイン

(S219)

今,なぜ超音波診断装置の人間工学的デザインが話題になるのか?

Why does an Ergonomic Design of Diagnostic Ultrasound System become the Topic Now?

佐久間 浩

Hiroshi SAKUMA

ソノグラファーズ超音波

Ultrasound, Sonographers

キーワード :

【はじめに】
 筆者は2001年の春,43歳の時に突然頚の痛みをおぼえた.画像上は特に問題はなく,頸肩腕症候群と呼ばれるものであった.症状はどんどん悪化し,頭痛や吐き気も頻繁に起こるようになった.原因としては,もちろん日常の生活習慣や加齢によるものと考えられたが,超音波検査を行う際の無理な姿勢と眼精疲労が無関係でないことは容易に想像が付いた.そういった視点から自分自身の超音波検査環境を見直すと,数々の問題点が露呈した.ということは,超音波検査人口が飛躍的に増えた現在では,同様の症状を発症する危険を孕んでいる方々が多く潜在しているということになる.
【装置のモニターの高さに関する発表】
 体調を崩してすぐに気が付いたことは,超音波診断装置のモニターが高すぎるのではないかということであった.本来,モニターは我々の目線よりも少し低い位置に無ければいけない.よってモニターのディスプレイ部の最上部を椅子に腰掛けたときの目線の高さと比較した.筆者の目線は床から127cmであったが,当時使用している13機種のうち8台(61.5%)はそれよりも高かった.この内容は2003年の日本超音波検査学会(名古屋)で発表した.その後,2008年時点での使用装置を調べたら13台中10台(76.9%)が127cmよりも高く,状況はむしろ悪化していた.
【超音波検査時の身体への負担】
 探触子を検査部位に当てたとき,肘を患者に乗せることなくわずかに宙に浮かせるために,表層筋の三角筋・僧帽筋,深層筋の棘上筋が主に緊張している.また,身体をまっすぐに保持しようとするため脊柱起立筋群が,モニター方向に頚を傾けるために板状筋や胸鎖乳突筋が緊張する.探触子走査のためには前腕伸筋群を使用している.さらに走査部位によっては腰方形筋,腹斜筋など腰への負担も大きくなる
【自分の身体のダメージを知る】
 自分自身の身体のダメージに気づかず,無理な業務を続けてしまうと,いずれは症状として表れ,辛い日々を過ごさなければならなくなる.できるだけ初期の段階でダメージに気がつき,対策を立てることが肝要である.ダメージのセルフチェック項目を挙げる.
【身体に優しい検査環境】
 身体のダメージを軽減するためには,日ごろの検査環境を下記のさまざまな角度から見直す必要がある.1)装置を選ぶ際には,モニターの高さ・大きさ,コントロールパネルの高さ・使い勝手,装置の奥行き,探触子の形状・重さ,プローブケーブルハンガーの有無・形状などに注目する必要がある.2)検査室全体を考える上では,椅子・検査用ベッドなどの備品はもちろん,検査室の照明・温度にも気をつけるべきである.3)労働条件も見直す必要がある.1時間程度働いたらストレッチを行うようにしたい.この時間はあくまでも体調管理に必要な時間であり,休息ではないという認識を職場全体に定着させることも重要である.