Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

パネルディスカッション
パネルディスカッション6
乳腺,甲状腺領域における良悪鑑別困難症例の画像的アプローチ

(S216)

乳腺領域における良悪性鑑別困難症例の超音波像の検討

Evaluation of Ultrasound Findings of difficult cases for differentiating benign or malignant breast lesions

池田 恵子

Keiko IKEDA

博愛会病院検査科

Clinical Laboratory, Hakuaikai Hospital

キーワード :

【目的】
当院では日本乳腺甲状腺超音波診断会議(JABTS)のカテゴリー(C)分類に加えてC-3を3a,3b に分けており,当院のC-3aはJABTS のC-3に,C-3bと4はJABTSのC-4にほぼ相当する.当院の過去5年間における超音波検査のカテゴリー別の乳癌症例頻度は,1ないし2は0.2%,3aは1.9%,3bは28.3%,4は86.1%,5は97.5%であり,画像上鑑別が困難な症例を経験した.今回我々は,超音波検査において良性と判断した悪性病変,及び悪性と判断した良性病変について,その超音波所見を検討したので報告する.
【対象】
期間は2008年1月から2008年12月までの1年間で,当院初治療乳癌症例132例のうち,超音波検査において良性と判断した13例,また悪性と判断したが病理検査にて良性疾患と診断された84例,計97例である.
【結果】
良性と判断した悪性病変13例は,年齢29-79歳(平均49.6歳),腫瘤像形成性病変は10例であり,腫瘤像非形成性病変は3例,乳管の拡張を主体とする病変1例,低エコー域2例であった.病変の最大径は6-30mm(平均12.2mm),腫瘤の境界は明瞭平滑2例(20.0%),明瞭粗〓8例(80.0%),高エコースポットは13例中3例(23.1%),血流シグナルは10例(76.9%)にみられた.また,13例中7例は経過観察症例で,うち5例は浸潤癌(平均最大径8.6mm)であった.病理組織型は非浸潤性乳管癌5例(38.5%),乳頭腺管癌4例(30.8%),硬癌2例(15.4%),充実腺管癌1例(7.7%),髄様癌1例(7.7%)であった.悪性と判断した良性病変84例は,年齢25‐83歳(平均46.4歳),腫瘤像形成性病変は67例であり,腫瘤像非形成性病変は17例,乳管の拡張を主体とする病変2例,低エコー域15例であった.病変の最大径は4-60mm (平均12.8mm),腫瘤の境界は明瞭平滑22例(32.8%),明瞭粗〓41例(61.2%),不明瞭4例(5.9%)であった.高エコースポットは84例中16例(19.0%),血流シグナルは52例(61.9%)にみられた.病理組織型は乳腺症50例(59.5%),乳管内乳頭腫14例(16.7%),線維腺腫12例(14.3%),その他が8例(9.5%)であった.
【考察】
良性と判断した悪性病変は,縦横比小,周囲の同様のものに紛れていたもの,小さな病変等が判断の理由と思われる.しかし,縦横比が小であっても境界は明瞭粗〓な腫瘤がほとんどであり,それぞれの病変の境界を詳細に観察すれば悪性と判断することが可能であったと思われた.また,血流シグナルが高率にみられ,判断の参考になると思われた.悪性と判断した良性病変は,境界明瞭粗〓が最も多く,縦横比大や血流シグナル及び高エコースポットの存在等が判断の理由と思われる.考えられる組織型などを考慮すると,良性とできるものもみられたが判断が困難なものが多くみられた.
【まとめ】
今回の検討を通して,良悪性の鑑別の難しさを改めて感じ,判断に苦慮する症例は境界等を詳細に観察するとともに,良悪性の判断ができないものは針生検などによる組織診断が必要と思われた.