Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

パネルディスカッション
パネルディスカッション6
乳腺,甲状腺領域における良悪鑑別困難症例の画像的アプローチ

(S215)

乳腺ソナゾイド造影超音波が良・悪性鑑別に有用であった両側に病変を持つ右乳癌の1例

A case of the breast cancer with bilateral breast lesion which contrast enhanced ultrasound using Sonazoid was useful in differentiation benign and malignant

金澤 真作1, 三塚 幸夫2, 緒形 秀昭1, 馬越 俊輔1, 齊藤 芙美1, 伊東 俊秀1, 白神 伸之3, 渋谷 和俊4, 金子 弘真1

Shinsaku KANAZAWA1, Yukio MITSUZUKA2, Hideaki OGATA1, Syunsuke MAGOSHI1, Fumi SAITO1, Toshihide ITO1, Nobuyuki SHIRAGA3, Kazutosi SHIBUYA4, Hironori KANEKO1

1東邦大学医学部外科学講座(大森)一般・消化器外科, 2東邦大学医療センター大森病院臨床生理機能検査部, 3東邦大学医療センター大森病院放射線診断部, 4東邦大学医療センター大森病院病院病理部

1Division of general and gastroenterological surgery, Department of Surgery (Omori), Toho University School of Medicine, 2Department of Clinical Functional Physiology, Toho University Omori Medical Center, 3Department of Radiographic Examination, Toho University Omori Medical Center, 4Department of Pathology, Toho University Omori Medical Center

キーワード :

【目的】
我々は,院内委員会の承認のもと被験者へ文書によるインフォームドコンセントを行ったうえで,乳腺疾患に対し第2世代超音波造影剤Sonazoidを用いた造影超音波検査(CEUS)を行っている.Sonazoidを用いたCEUSでは,腫瘍の微細な血管の走行が観察可能であることが判ってきた.現在では,CEUSによる乳房腫瘍の良・悪性鑑別の可能性なども検討されている.良・悪性鑑別には,Sonazoidの拍動性流入の有無,腫瘍外染影の有無,腫瘍内部不染域の有無は重要な指標となることも判ってきた.今回,両側E領域を中心に不整な低エコー域を認め,CEUSが良・悪性鑑別に有用であった症例を経験したので,画像と伴に所見を報告する.
【方法】
Sonazoidは肝における推奨投与量の半量を静脈内投与.超音波装置はaplioXG,探触子は高周波リニアプローブPLT-805ATを使用.Sonazoid投与後から1分間の動画と,目視で染影を認めた時点から20秒間のMicro Flow Imageより,拍動性流入の有無,腫瘍外染影の有無および不染域の有無を評価した.
【症例】
43歳閉経前の女性,2度の出産授乳歴あり.触診による検診で両側乳房の硬化を指摘されて当科受診となった.両側乳房ともにE領域を中心に硬化性変化を認めたが,左右差は認めなかった.マンモグラフィでは,良性を考える石灰化を認め両側ともにカテゴリー2と判断された.超音波では,右に36 x 35 x 15 mm,左に40 x 33 x 14 mm大のいずれも低エコー,不整形で境界不明瞭な微細石灰化や嚢胞を内包した変化を指摘されている,ドプラでは血流信号の亢進を疑った.コアニードルを用いた組織診では明らかな悪性所見を認めなかった.半年以内の再診を指示されていたが,次の受診は約1年後.再診時に両側乳房は更に硬化していたため,マンモグラフィは施行されていない.超音波にて腫瘍径に明らかな変化を認めずドプラでの血流信号の亢進も増強を示さなかったが,形状がより不整となり微細石灰化も増加しており悪性を疑われCEUSが施行された.CEUSでは,左乳腺の変化は,その内部および周囲乳腺が緩やかにそれぞれ均一でほぼ同等に造影されていたが,右乳腺の変化では,Sonazoidの拍動性流入を認め,腫瘍内部不染域を伴っていた.腫瘍外染影の有無は,腫瘍径が大きなことと境界不明瞭であったことから判定出来なかった.この所見は左乳腺の変化は良性を右乳腺の変化は悪性を示唆するものである.造影CTでは左乳腺に比べ右乳腺でCT値の上昇を認めた.VACORAを用いた超音波ガイド下生検にて,左乳腺の変化は,アポクリン化生を伴い乳管上皮の過形成を認めたが二層性配列の保たれた組織が採取されたが,右乳腺の変化は,ER陽性,PgR陽性,HER2 score 1の乳頭腺管癌であった.
【考察】
本症例は,両側E領域に硬化性変化を伴った病変を認め,初診時の超音波では両側伴に悪性を否定出来なかった.1年後の超音波では両側共に画像上の増悪を疑ったが,左右で異なる組織型であることは想像されなかった.造影CTにて左乳腺に比べ右乳腺でCT値の上昇を認めたが,CTの造影剤は液体であるため癌組織では造影剤が血管外漏出を引き起こしCT値が上昇し,良性組織では周囲乳腺と血管増生に差がないために起きた差異であると考えられた.Sonazoidの拍動性流入の有無,腫瘍外染影の有無および腫瘍内部不染域の有無を指標としたSonazoidを用いたCEUSは,良・悪性診断困難な症例の画像的アプローチに有用であると考えられた.