Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

パネルディスカッション
パネルディスカッション5
各領域における3 D,4 D の現況

(S211)

泌尿器科領域における3次元超音波検査法

3 dimensional ultrasonography in urology

松尾 良一

Ryoichi MATSUO

済生会長崎病院泌尿器科

Urology, Saiseikai Nagasaki Hospital

キーワード :

【緒言】
医療技術の進歩に伴い,超音波検査法は,従来の2次元画像超音波検査から3次元ないしはリアルタイム3次元とも呼ばれる4次元画像超音波検査が普及しつつある.尿路は,尿という液体が通過・貯留する体腔臓器であり,上部尿路の呼吸性移動以外は静止した状態にあるため,3次元超音波検査法の良い適応臓器であると考えられる.しかし,実際には,泌尿器科領域においては,3次元超音波検査法が十分に普及しているとはいえないのが現状である.今回,泌尿器科領域の3次元超音波検査法について,一般的なsonographistが行える経腹壁的検査法と,泌尿器科の特殊な検査法である経直腸的検査法における代表的疾患の3D・4D画像を供覧するとともに,泌尿器科領域で3次元超音波検査法が普及しない原因についても言及してみたい.
【方法】
主として使用した超音波診断装置は,汎用型の超音波検査装置である日立メディコ社EUB 7500およびEUB 8500である.膀胱・前立腺を観察する場合には,膀胱にある程度の尿が貯留した状態で検査を行った.まず,Bモード法にて通常の2次元超音波検査を行った後,3Dモード,必要に応じて4Dモードにて観察した.
【結果】
上部尿路である腎盂・腎杯〜尿管は,何らかの尿通過障害のために尿路の拡張がないと観察できなかったが,観察可能な症例では,拡張した腎盂・腎杯の様子や腫瘍の状態が立体的に描出された.膀胱は,腫瘍の状態や,排尿障害に起因する肉柱形成が明瞭に観察でき,尿管や尿道に留置したステントやバルーンカテーテルなど,内視鏡では観察不能な膀胱内腔の状態を観察することができた.また,前立腺肥大症の症例では,前立腺が膀胱内に突出した様子や,前立腺を切除後に開大した膀胱頚部が詳細に描出できた.
【考察】
3次元超音波検査法は,比較的簡便かつ非侵襲的に尿路の立体構造を観察表示できる優れた検査法である.泌尿器科医は,他の診療科医と異なり,患者を診察後ただちに,CT検査やMRI検査以外は超音波検査のみならず内視鏡検査を自ら行う習慣である.そのため,どうしても超音波検査は,確定診断に直結するCT検査・MRI検査・内視鏡検査のスクリーニング的な位置づけである.しかも,以前は硬性鏡を使用していたためやや侵襲的な検査法であった膀胱鏡検査も,最近では,軟性鏡である電子スコープが普及し,容易に内視鏡検査を行うようになってきたため,超音波検査の意義がさらに薄れてきている印象である.しかし,尿道狭窄症例や小児など内視鏡検査が行えない場合も少なくなく,非侵襲的にベッドサイドで行える超音波検査法の意義は大きいと考える.