Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

パネルディスカッション
パネルディスカッション4
専門医ソノグラファー養成のための教育システムを考える

(S206)

我が国における心エコー教育の現状と問題点

System for Education of Echocardiologists and Cardiac Sonographers in Japan

増山 理

Tohru MASUYAMA

兵庫医科大学内科学循環器内科

Cardiovascular Division, Department of Internal Medicine, Hyogo College of Medicine

キーワード :

 何ができれば,またはどういうレベルに達しておれば心エコーの専門医足り得るかという基準を作るのは難しい.アメリカでは,アメリカ心臓病学会とアメリカ心エコー図学会(American Society of Echocardiography, ASE)が合同で,心エコーのトレーニングの基準を記載している.これは,心エコー専門医足り得る基準というより,心臓専門医としての研修の一環としての心エコー教育の指針と言うべきものである.この指針は具体的には3つのレベル(Level 1,Level 2,Level 3 )から構成されている.この中でLevel 3は心エコー専門医を目指す循環器内科医のための基準である.Level 1では3ヶ月間,心エコーに専属でトレーニングを受ける.心臓血管系の解剖,生理との関連で心エコーの基本を学ぶのであるが,150のMモード,断層,そしてドプラの検査を読む(解析する)ことが義務付けられている.そのうち75の検査は自らが行わねばならない.Level 2では,さらに3ヶ月間に150の検査の読み(うち75の検査は自ら施行)が要求されている.また,経食道心エコー,3次元心エコーや負荷心エコーへの参加も推奨されている.ここまでが心臓内科医を標榜するために必須な心エコーのトレーニングと位置づけられる.心エコーの専門医になるには,さらに6ヶ月間のトレーニングが推奨されている(Level 3).この期間には450の検査を読み,自らが150の検査を行わなければならない.それに加えて,心エコーに関する研究を行うことや,新しい超音波技術やその応用も理解することが求められている.そしてその技能を評価するシステムとしてアメリカ心エコー図学会認定の専門医というものがある.我が国では循環器専門医制度がある.しかし,その中で心エコーのトレーニングの基準については残念ながら明確に記載されていない.心エコー専門医としての資格としては日本超音波医学会の超音波専門医があげられよう.実際には,日常心エコーに携わっている循環器医のみが保持している資格であるが,試験のみでその技量を判断することは非常に難しい.専門医であれ技師であれ,心エコー教育についてはその手法を含めて各医療機関に任せられているのが我が国の現状であろう.その教育のシステムがうまく行っているかというと,必ずしもそうとは言えないのではなかろうか.日本心エコー図学会では冬には大阪,夏には神戸,そして秋には東京でそれぞれ2日間かけての講習会を開催している.そのいずれもが数百人規模のものであり,しかも満員で聴講を許されないものも数多く出る状態が続いている.その大きな理由として,一度参加した者が次も参加したくなることがあげられる.もちろん企画をする側もマンネリにならないように配慮・工夫しており,それが一定以上の成果をあげているということも言えよう.でも,心エコーは奥が深くて,講習会を一度や二度聴講したぐらいではなかなか満足な検査ができないことも理由としてあげられるのではなかろうか.講習会でもライブやハンズオンを取り入れたりして,できるだけ実技の伝授に心がけている.しかし,どう考えてもそれだけでは不充分である.実際には医師にしてもソノグラファーにしてもその養成のための教育施設や教育システムが日本では皆無に等しい.今後,日本においてもそういう施設やシステムの構築が強く望まれる所以である.