Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

パネルディスカッション
パネルディスカッション4
専門医ソノグラファー養成のための教育システムを考える

(S205)

医師が行うソノグラファーの教育

Education system for sonographers

石田 秀明1, 小松田 智也1, 渡部 多佳子1, 大山 葉子2, 長沼 裕子3, 小川 眞広4, 熊田 卓5, 宮本 幸夫6, 幕田 倫子7

Hideaki ISHIDA1, Tomoya KOMATSUDA1, Takako WATANABE1, Yoko OHYAMA2, Hiroko NAGANUMA3, Masahiro OGAWA4, Takashi KUMADA5, Yukio MIYAMOTO6, Michiko MAKUTA7

1秋田赤十字病院超音波センター, 2秋田組合総合病院臨床検査科, 3市立横手病院内科, 4駿河台日本大学病院内科, 5大垣市民病院消化器科, 6東京慈恵医科大学画像診断部超音波診断センター, 7大原綜合病院臨床検査部

1Center of Diagnostic Ultrasound, Akita Red Cross Hospital, 2Medical Laboratory, Akita Kumiai Medical Hospital, 3Internal Medicine, Yokote Municipal Hospital, 4Internal Medicine, Surugadai Nihon University, 5Department of Gastroenterology, Ogaki Municipal Hospital, 6Diagnostic Ultrasound Center, Department of Diagnostic Imaging, Jikei University School of Medicine, 7Medical Laboratory, Ohara General Hospital

キーワード :

【はじめに】
日本超音波医学会にとっても,教育は重要な問題である.本学会の場合教育対象はa)若手医師(Drs)と,b)技師(Sonog),に大別され,かなり他の学会と事情が異なる.今回は,指導医がSonogを対象にどのような教育システムを構築すべきか,自分の約25年の経験を振り返り,成功したシステムと失敗したシステムを基に,検討してみた.さらに,そこからDrsの超音波教育システムに関しても言及する.
【成功したシステム】
私は時間(距離)的制約から,県内では,Sonogの教育をゆっくりモードで,県外では,短期完成モードを採用し教育にあたってきた.結論的には,前者が成功し,後者は失敗した.まずその前者のシステムについて述べる.県内の4ヶ所で2月に一度の間隔で,ライブも交え,毎回テーマを変え,疾患の超音波所見の解説をした.その時心がけたことは,a)所見の成り立ちを原理的な観点から解説すること,と,b)会の経費を極力抑えること(会場は医師会館や病院大会議室,差し入れはお茶とビスケット程度),であった.初めは,泣きたくなるほど,“そろいもそろって,覚えれず直ぐ忘れる”状態であったSonogが5年目あたりから反応に変化を見せ,質問にも次第に的確に答えられるようになった.多くのSonogの中でも特に優秀な人材を選びその人に,私とSonogの橋渡し(主にSonogの相談役)になってもらった.それ以後はゆっくりではあるが,優れた若手Sonogが育ってきた.なお,超音波検査士認定試験のためのリポートに関しては,受験者自身がしっかりした認識を持つまで何度でも修正させた.受験の合格率は100%近く,指導は的確であった,と自負している.
【失敗したシステム】
ある時期他県の(超音波を知らない)技師長さん達から,Sonogの超音波教育を依頼され,先方が決めたスケジュールで年数回講演会を行った.会場は立派で毎回懇親会付きであった.与えられたテーマも“—の最前線”,や,“—の現状と将来”といったこわばったもので,Sonogもこわばって質問もゆったりした交流も生まれなかった.つまり,教育には果てしない時間と反復指導が必要で,それが可能なシステムを当事者達が構築すべきである.そこから,地域の核になるSonogが育つと,その地域の超音波教育が軌道に乗る,と思われる.この経験を厚労省の臨床研修制度に当てはめると,今の制度ではDrsの超音波教育は無理といわざるを得ない.指導医が今すべきは全国に優秀なSonogを多数育成する実際的で持続可能なシステムを構築することにある,と思われる.詳細で具体的な事例に関しても,背景因子を含め,述べたい.