Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

パネルディスカッション
パネルディスカッション4
専門医ソノグラファー養成のための教育システムを考える

(S204)

腹部超音波専門医の養成におけるVolume Navigation Systemの応用

Education of Abdominal Sonographer using Volume Navigation System

小野 尚文1, 磯田 広史1, 江口 尚久1, 高橋 宏和2, 江口 有一郎2, 水田 敏彦2

Naofumi ONO1, Hiroshi ISODA1, Takahisa EGUCHI1, Kazuhiro TAKAHASHI2, Yuichirou EGUCHI2, Toshihiko MIZUTA2

1ロコメディカル江口病院消化器内科, 2佐賀大学内科

1Internal Medicine, Eguchi Hospital, 2Internal Medicine, Saga University

キーワード :

「どうして若い医師の超音波離れが進んだのか?」このことを考えずして専門医ソノグラファー養成のための教育システムについて語ることはできない.この原因について視点を変えてみると,教わる側と教える側の世代間の問題や医療経済の問題が考えられる.時代的流れ(教わる側の気質的問題)で仕方ない,ではなく,本当は時代に合った指導になっていないのではないか,と考えさせられることがある.医療経済の問題では経営者側からみると,文句が多く扱いにくい医師より検査士の方がコスト面で有利である.医師の問題は時間におわれ超音波程度なら検査技師にさせればいいとなり,結果的に手間がかかり自分でするほどの検査と感じなくなっているのではないだろうか?.腹部領域の超音波検査で考えてみると,超音波を始めるとまず直面するのが,CT・MRIにて認識している臨床的解剖と超音波で描出される任意断面画像を頭の中で突き合わせ“どこを見ているのか”混乱が起こるようである.その後きめられた走査を行うことで徐々に立体的に認識できるようになる(多くの消化器病医はここまで).さらなる進歩のためには,超音波画像とCT画像の詳細な対比を繰り返すことで超音波検査法の死角や限界を理解し,走査法などの工夫が加わり専門医の域に達していくと思われる.近年CT・MRIの進歩もあり,超音波では描出できない肝腫瘤(主に肝細胞癌)が診断されるようになり,治療にnavigation systemが使用されるようになってきた.この方法では造影CT(またはMRI)画像と超音波画像の同一断面が同時描出されるため肝腫瘤の描出だけでなく解剖学的評価にも優れていた.今回この方法が新たな超音波検査のトレーニング法の一つになるのではないか試みてみた.使用した超音波装置はLOGIQE9 BT10 (GE Healthcare) のVolume Navigation System(以下V-Nav)である.あらかじめ取得したCTまたはMRIのボリュームデータを用い,超音波プローブに装着した磁気センサーが位置を認識し,超音波画像とCT画像の同一部をマーキングし位置あわせが完了し,通常のプロ-ブ走査を行うと超音波と同一断面のCT画像がリアルタイムで表示される.このV-Navで腫瘍評価後に肝臓全体を描出してみると超音波の死角(とりわけドーム直下)がより明確に理解可能であった(死角軽減のトレーニングの可能性).肋弓下走査で肝右葉が描出できない症例は,腸管ガスのためで背部の肋間走査でないと描出できないことや,膵臓も胃のガスでいかに見えないか,ガスがずらせたならどのように見えるかなどの理解が容易であった.また,門脈側副血行路の描出にも有用であり,改めて多くのこと気付かされた.もう一つのV-Nav の利用法は,超音波像と超音波像の対比が可能であり,指導医とトレーニング者の走査の比較検討も可能であり,プローブ走査の向上に期待される.現在この方法は,患者のCTのボリュームデータを用いているため,常時行うことは不可能であるが,今後疾患モデルが作成できれば腹部専門医ソノグラファー養成における新たな教育システムになることが期待される.