Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

パネルディスカッション
パネルディスカッション3
腹部救急の超音波診断update

(S201)

急性期門脈血栓症の治療効果予測におけるソナゾイド造影超音波の有用性の検討

Efficacy of contrast-enhanced ultrasound with Sonazoid to predict the effect of anticoagulation therapy for acute portal vein thrombosis

石橋 啓如1, 丸山 紀史2, 高橋 正憲1, 横須賀 收1

Hiroyuki ISHIBASHI1, Hitoshi MARUYAMA2, Masanori TAKAHASHI1, Osamu YOKOSUKA1

1千葉大学大学院医学研究院腫瘍内科, 2バージニア・コモンウエルス大学消化器内科

1Department of Medicine and Clinical Oncology, Chiba University Graduate School of Medicine, 2Division of Gastroenterology and Hepatology Virginia Commonwealth University

キーワード :

【目的】
急性期の門脈血栓症には速やかな治療の開始が望ましいと報告されている.一方で,血栓に対する抗凝固療法は出血等の合併症のリスクも伴っており,治療適応は慎重に判断されるべきである.しかし,治療効果予測に関する有用な指標については十分に検討されていない.ここでソナゾイド造影超音波は,微細な血流のリアルタイムな観察が可能であり,安全性にも優れている.今回,抗凝固療法が予定された高度の急性期門脈血栓症例において,治療前の門脈血栓部をソナゾイド造影超音波にて観察した.その所見を治療後の臨床経過と比較し,門脈血栓症の治療効果予測における本法の有用性について検討した.
【対象】
2008年10月から2009年11月までに経験した門脈血栓症8例(43-73歳,肝硬変4,胆管炎1,脾摘術後1,無基礎疾患2)を対象とした.発熱や腹痛等の症状発現から診断までの期間は3.8±2.9日(1-10)であり,急性期と判断され,全例に抗凝固療法(低分子ヘパリン6例,ヘパリン2例)が施行された.
【方法】
超音波装置はAPLIO-XG(東芝,3.75MHzプローブ)を使用し,自然呼吸下にて検査を行った.まず治療前において,B-modeおよびカラードプラでの観察の後,ソナゾイド0.0075ml/kgを急速静注し造影超音波(Harmonic Imaging,MI:0.25)を施行した.なお焦点深度は最深部とし,DEPTHとゲインは至適に調節した.治療1-10日後にも超音波検査を施行し,治療効果を判定した.本研究は,倫理委員会承認後,各症例への十分な説明と同意の上で実施した.
【成績】
(1)治療前の非造影超音波所見:血栓の占拠範囲は,7例では門脈本幹を含む肝内外の門脈系に拡がり,その5例では血管のほぼ全体が,また2例では半周以上が占拠されていた.他の1例では肝内門脈右枝に,内腔全体を占める血栓がみられた.なお血栓部のB-mode所見は,4例では門脈内腔の実質エコー像として観察されたが,他の4例では無エコーに近くB-modeで血栓の存在を認識することが容易ではなかった.また超音波カラードプラでは,全例で血栓部における血流は極めて微弱あるいは検出されなかった.(2)治療前の造影超音波所見:4例では,まず血栓内に線状の造影効果が出現し血栓全体に広がった.血栓内における造影効果の進行方向は2例で順流,他の2例では逆流であったが非拍動性であり腫瘍栓に見られる所見とは異なっていた.次の2例では,造影される血栓と造影されない血栓が観察された.これら6例における血栓内造影効果の発現は,肝動脈造影の平均7秒後(3-16)と遅延しており,門脈血流の停滞を反映したものと考えられた.残りの2例では,血栓に造影所見を認めなかった.(3)治療前の超音波所見と治療効果の対比:血栓全体に造影効果を認めた4例では,治療により血栓の消失が得られた.造影部と非造影部が共存していた2例では,前者は消失して門脈血流が改善したが後者には治療効果が得られなかった.血栓に造影所見を認めなかった2例では,治療後にも血栓は残存していた.再開通した6例において,治療前の血栓のB-mode所見は,4例では無エコーに近かったが2例では実質エコーとして観察されていた.
【結論】
ソナゾイド造影超音波は,従来の超音波ドプラでは観察困難であった血栓内の微細な血流を検出することで,血栓の器質化の程度を推定できる可能性が示唆された.本法は,急性期の門脈血栓症に対する抗凝固療法の治療効果予測に有用である.