Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

パネルディスカッション
パネルディスカッション3
腹部救急の超音波診断update

(S201)

総胆管結石症における体外式超音波検査の有用性

Usefulness of ultrasonography in patients with choledocholithiasis

大塚 雄一郎, 大谷 圭介, 植木 敏晴, 馬場 崇徳, 川本 研一郎, 野間 栄次郎, 光安 智子, 松井 敏幸

Yuichiro OTSUKA, Keisuke OTANI, Tosiharu UEKI, Takanori BABA, Kenichiro KAWAMOTO, Eijiro NOMA, Tomoko MITSUYASU, Toshiyuki MATSUI

福岡大学筑紫病院消化器科

Department of Gastroenterology, Fukuoka University Chikushi Hospital

キーワード :

【目的】
急性腹症において体外式超音波検査(US)は,その利便性および低侵襲性によりスクリーニング検査として広く用いられている.そこで当科で経験した総胆管結石症症例におけるUSの有用性を明らかにすることを目的とした.
【対象と方法】
1993年〜2006年までに当科で経験した総胆管結石症448例のうち,胆嚢摘出術既往例を除く358例を対象とした.尚,胆嚢結石合併が222例(62.0%),肝内胆管結石合併が16例(4.5%)であった.検討項目はUSの1.総胆管結石の描出率,2.総胆管拡張(8mm以上)の有無,3.肝内胆管拡張(4mm以上)の有無,4,胆嚢径の拡張(長径80mm以上,短径40mm以上)の有無,5.胆嚢壁肥厚(4mm以上)の有無,6.胆泥の有無,で急性胆管炎合併例292例の重症度(重症,中等症,軽症)別の検討も行った.
【結果】
1.総胆管結石の描出率は43.3%と低率であったが,2,3.総胆管拡張は69.1%,肝内胆管拡張は52.4%で,総胆管拡張または肝内胆管拡張のいずれかを認めるものは70.7%であった.4.胆嚢径の拡張は28.6%,5.胆嚢壁肥厚は30.4%に認めた.6.胆嚢内の胆泥は40.5%でいずれも低率であった.急性胆管炎の重症例(10例)では総胆管結石の描出率は44.4%,総胆管拡張は75.0%に認めた.肝内胆管拡張は75.0%に認めた.総胆管拡張または肝内胆管拡張のいずれかを認めるものは87.5%であった.胆嚢径の拡張は50.0%,胆嚢内の胆泥貯留は37.5%であった.中等症例(166例)では総胆管結石の描出率は44.2%,総胆管拡張は74.0%,肝内胆管拡張は57.8%,総胆管拡張または肝内胆管拡張は75.3%に認めた.胆嚢径の拡張は40.6%,胆嚢内の胆泥貯留は51.3%だった.軽症例(121例)では総胆管結石の描出率は39.7%,総胆管拡張は69.6%,肝内胆管拡張は54.5%,総胆管拡張または肝内胆管拡張のいずれかを認めるものは70.5%であった.胆嚢径の拡張は13.9%,胆嚢内の胆泥貯留は32.2%であった.総胆管結石の描出率は重症度別で有意差はなかったが,総胆管・肝内胆管の拡張の頻度は軽症,中等症,重症の順に高かった.
【結論】
総胆管結石症におけるUSでの結石描出率は約50%程度で,胆嚢拡張や胆泥の検出率も低率であった.総胆管・肝内胆管拡張の頻度は約70%程であり,特に胆管炎の重症度が増すと高率であった.したがって総胆管結石症が疑われる症例においては,特に総胆管・肝内胆管に着目すべきであろう.