Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

パネルディスカッション
パネルディスカッション2
超音波で胎児を何処まで診るべきなのか?

(S197)

妊婦健診エコーで突然の告知に戸惑う母親達。意思決定とそれに継続する支援を求めて

The Impact of Early Prenatal Disclosure by US for Mothers; We Need Continous Support and Empathetic Manner

藤本 佳代子

Kayoko FUJIMOTO

出生前診断の告知のあり方と自己決定の支援について考える“泣いて笑って”代表

Support group “cry and smile” -Thinking about the issues of the prenatal diagnosis and support for the self-decision-

キーワード :

 タイトルには“妊婦達”ではなく,あえて“母親達”と表現した.妊婦はまだ胎児を出産し抱いてはいないから“母親ではない”とは言えない.母性とは,我が胎内に小さな生命が芽生えたことを知った時から育っていくものである.妊婦は既に母親である.
 当会“泣いて笑って”にはHP(ホームページ)立ち上げ当初の平成16年7月から現在までに,延べ4000通超のメールが寄せられている.差出人の大多数は,胎児異常や母体異常などにより,その妊娠を継続するか否かの意思決定を迫られている母親や父親,あるいはその経験を持つ者たちである.現在,非公開性の掲示板には延べ800名の参加者があり意思決定までのタイムリミットが迫っている当事者や体験者が書き込み,互いに言葉を交わしている.
 出生前診断を行う機械の精度,医師や技師の技術は上がってきているのだろう.それはそれで,とても素晴らしいことである.だが,その受け手側にとってそれがもたらすものは,決して恩恵ばかりではない.楽しみにしていた妊婦健診で,まさかの告知を受ける母親.告知を受け次の受診までの空白の間,母親達は声にならない声で叫んでいることが多い.母親しか護れない,今確かにここにある命をどうするか.この事実をどう受け止め,今後,どのように生きていくべきか,その決断は胎児の命と共に母親と父親のその後の人生にも大きな影響を及ぼす.
 私は今回,胎児診断や出生前診断について,患者の立場から,意思決定までとそれに継続する支援を求めていきたい.そして医療者の皆さんには,声にならない声を聴く勇気を持っていただきたいと願っている.