Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

パネルディスカッション
パネルディスカッション1
弁膜症を見直す

(S193)

大動脈弁狭窄症進行における弁尖内出血の意義

The role of intraleaflet hemorrhage in the progression aortic valve stenosis

辻野 健1, 赤堀 宏州2, 内藤 由朗2, 増山 理2

Takeshi TSUJINO1, Hirokuni AKAHORI2, Yoshiro NAITO2, Tohru MASUYAMA2

1兵庫医療大学薬学部, 2兵庫医科大学内科学循環器内科

1Department of Pharmacy, Hyogo University of Health Sciences, 2Cardiovascular Division, Department of Internal Medicine, Hyogo College of Medicine

キーワード :

【目的】
高齢化社会を迎え,加齢変性による大動脈弁狭窄症(AS)は年々増加している.加齢変性によるASは動脈硬化と類似した機序が想定されており,高血圧,糖尿病,脂質異常症,喫煙,メタボリックシンドロームなどが危険因子となる.ASの確定診断と重症度評価に心エコー検査は不可欠の検査である.胸痛,失神,心不全など症状を有するASはすぐに弁置換術の適応となるが,そうでない場合は心エコー検査を定期的に施行しながら経過観察することになる.そうやってフォローアップしていると,しばしば急に狭窄度が進行する場合がある.その時,弁には何が起こっているのであろうか.動脈硬化において突然症状が悪化する原因としてプラークの破綻がある.近年プラーク破綻の機序としてプラーク内出血が注目されている.すなわち動脈硬化巣には外膜側から脆弱な新生血管が侵入しており,そこから出血する事がプラークの体積増大や破綻の引き金になると考えられている.我々は同様の機序がASの進展に関与するのではないかと考え,検討をおこなった.
【対象】
加齢変性によるASに対し大動脈弁置換術を受けた患者のうち,術直前とそれより3カ月以上前の時点での心エコー検査において大動脈弁口面積(AVA)の評価を受けていた患者41名.
【方法】
ASの進行度を,2回の心エコー検査において,連続の式によって求められたAVAの変化を2回の検査の間隔(日数)で除し,365を掛けたもの(⊿AVA)により評価した.免疫染色を行い,弁尖内出血をグリコフォリンA(赤血球特異的膜タンパク質),マクロファージ浸潤度をCD68の免疫反応陽性領域の面積により,血管新生をvon Willebrand factor陽性の管腔構造物の数により評価した.
【結果】
新生血管の数が多いほど弁尖内出血が多く,弁尖内出血とマクロファージ浸潤度に強い正の相関があり,弁尖内出血やマクロファージ浸潤度が強いほどASの進行速度が速かった.弁尖内出血,マクロファージ浸潤度,血管新生,高血圧,糖尿病,脂質異常症,喫煙,スタチンの使用などを独立変数,⊿AVAを従属変数として多変量解析を行ったところ,弁尖内出血のみが有意な寄与因子として選択された.
【結語】弁尖内出血はASを進行させる重要な機序である.それを非侵襲的に評価する画像診断と予防する新たな治療法が望まれる.