Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

パネルディスカッション
パネルディスカッション1
弁膜症を見直す

(S190)

僧帽弁形成術における術前・術中・術後心エコーの意義

Significance of Pre,Intra and Postoperative Echocardiography in Mitral Valve Repair

山近 史郎1, 三浦 崇2, 江石 清行3

Shiro YAMACHIKA1, Takashi MIURA2, Kiyoyuki EISHI3

1特別医療法人春回会井上病院循環器科, 2佐世保市立総合病院心臓血管外科, 3長崎大学医学部心臓血管外科

1Cardiology, Shunkaikai Inoue Hospital, 2Cardiovascular Surgery, Sasebo General Hospital, 3Cardiovascular Surgery, Nagasaki University Hospital

キーワード :

【はじめに】
僧帽弁手術とりわけ僧帽弁形成術(MP)において心エコー法による術前,術中評価の重要性が増している.弁置換術では弁周囲逆流やStuck valveなどにおいて術中エコーの評価は欠かせない.形成術では残存逆流の評価だけでなく術中での僧帽弁前尖の前方運動(SAM)や大動脈弁逆流の新たな出現などに注意を要する.
【目的】
MPにおいてSAMを発生した症例について検討し,その特徴,遠隔評価,SAMの予測などについて検討した.
【対象と方法】
1999.4〜2009.4において長崎大学および佐世保総合病院で施行した僧帽弁閉鎖不全症(MR)に対するMP257例(変性104例,後尖形成123例)について術前・術中・術後エコーを施行し,SAMを有した例の逸脱部位,心エコー所見,手術手技などにつきSAM(-)例と比較検討した.
【結果】
SAM出現は8例に認められ全形成術での頻度は3.1%であり,何れも後尖形成例に認められ頻度は6.5%であった.MRの病因としてSAM(+)は全例で変性であった.SAMは1例において術後遠隔期に認められた.逸脱部位ではP2を含む例が4例(50%)と多くPC,AC単独例では認められなかった.術前心エコー所見ではLVEFが亢進したりLVHを認める例に多く認め,形態の特徴としては心室中隔基部肥厚で1例はSAMを認めないHCMであった.形成術手技では弁尖部分切除例でSAMの有無に差はなかったが,三角切除術21例ではSAMは認められなかった.弁輪形成では全例で自己心膜使用例であった.SAM(+)でのMR評価には術中水試験は無効であり,ポンプオフでのTEE評価において術中SAM7例中4例において再ポンプ施行し2例は再形成でMRを制御でき2例は弁置換術を施行した.遠隔期にSAMが持続し現在も外来経過フォロー中の1例は,β遮断剤やIa群抗不整脈薬の投与中で3〜4度のMRは残存するものの心不全の増悪はきたしていない.
【結論】
術中SAMを発生する要因としては左室肥大の形態に加えて後尖の手術手技などが関連するものと考えられる.術後遠隔期にSAMとMRが残存する例では薬剤の調節や生活制限が必要であるが心不全の重症化は少ないと考えられた.また術中SAMや有意な残存MRを認めなくても遠隔期にSAMが顕在化する可能性もあり,術中のみならず術後遠隔期にも注意深いフォローアップが重要である.