Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

シンポジウム
シンポジウム12
膵疾患の超音波診断

(S187)

IPMN由来浸潤癌の体外式超音波所見の検討

The review about ultrasound findings of invasive ductal carcinoma derived from IPMN

齊藤 正人, 廣川 直樹, 宇佐見 陽子, 鷲尾 嘉一, 荒谷 和紀, 佐藤 大志, 笠原 理子, 河合 有里子, 晴山 雅人

Masato SAITO, Naoki HIROKAWA, Yoko USAMI, Yoshikazu WASHIO, Kazunori ARATANI, Taishi SATO, Michiko KASAHARA, Yuriko KAWAAI, Masato HAREYAMA

札幌医科大学 放射線医学講座

Department of Radiology, Sapporo medical university

キーワード :

【目的】
日常診療上,膵管内乳頭粘液性腫瘍(以下IPMN)由来浸潤癌は通常型膵癌と比べエコー輝度が高い傾向があり鑑別に有用と考えている.上記を検証する目的に病理学的に確定されたIPMN由来浸潤癌の体外式エコー所見を通常型膵癌と比較検討するとともに造影所見などから特徴的所見がないかに関しても評価・検討する.
【対象・方法】
対象は2007年1月〜2009年12月までに当科でUS検査施行した膵腫瘤のうち,外科的切除がなされ,病理診断でIPMN由来浸潤癌と診断された8例(男4女4,平均年齢70.6歳).USでの腫瘍平均径39.8±20.6mm.診断装置は東芝社製Aplio XG/XVを使用.全例で造影US施行.造影剤はソナゾイド0.5ml/bodyで使用した.外科切除され病理診断を得ている通常型膵癌2症例のUS画像を比較対照とし,これとほぼ同じ程度のエコー輝度の腫瘤の場合を1点,通常型膵癌よりも若干の輝度が高い,または通常型膵癌と同程度の輝度だが内部高エコー領域の点在を含む場合を2点,通常型膵癌よりも高い輝度の腫瘤として認識できる場合を3点,としてスコア化し,当科の放射線科診断医5名に評価を依頼した.造影US所見では造影効果および腫瘍血管の描出の有無,その他診断に有用な特徴的所見の有無を検討した.
【結果】
8症例の輝度平均スコア2.65.うち7例(87.5%)では平均2以上,また5例(62.5%)では5名評価者全員が3点と評価した.造影所見では全例で腫瘍の造影効果がされ,うち6例(75%)で明瞭な腫瘍血管描出がみられた.また1〜2分後のlate vascular phaseでは腫瘍内部に微小嚢胞様の無エコー域が点在してみられる症例が5例(62.5%)であった.
【考察】
IPMNが充実性腫瘤として描出される場合には通常型膵管癌との鑑別に苦慮する例がある.両者の鑑別は予後推察ならびに治療方針決定の観点から重要である.IPMN由来浸潤癌はIPMNの特徴を呈する部分が描出されることがその鑑別に寄与すると考えている.今回の検討では①IPMN由来浸潤癌ではエコー輝度が通常型膵癌と比べ高い傾向だった.その原因として膵管内乳頭状腫瘤の凹凸不正な形状が形成する微小腔による多重反射,微小腔に貯留した粘液などによる乱反射などを見ていた可能性が考えられる.また②造影USで嚢胞様の無エコー域が見られた.これは粘液を有する小嚢胞腔や乳頭状の凹凸不整な形状が形成する微小腔によるものが一因と考えられたが,以上の確定には今後の症例蓄積が必要である.
【結語】
IPMN由来浸潤癌の体外式超音波所見の検討にて,腫瘤エコー輝度や造影における腫瘍血管の明瞭な描出,嚢胞様無エコー域の所見の有無がIPMN由来浸潤癌と通常型膵癌との鑑別に有用な可能性が示唆された.