Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

シンポジウム
シンポジウム12
膵疾患の超音波診断

(S186)

膵内副脾診断におけるSonazoid造影超音波検査の有用性

The usefulness of Sonazoid-enhanced ultrasonography for the diagnosis of intrapancreatic accessory spleens.

牧野 祐紀1, 今井 康陽1, 小来田 幸世1, 関 康2, 比嘉 裕次2, 澤井 良之1, 井倉 技1, 福田 和人1, 高村 学2

Yuki MAKINO1, Yasuharu IMAI1, Sachiyo KOGITA1, Yasushi SEKI2, Yuji HIGA2, Yoshiyuki SAWAI1, Takumi IGURA1, Kazuto FUKUDA1, Manabu TAKAMURA2

1市立池田病院 消化器内科, 2市立池田病院 放射線科

1Department of Gastroenterology, Ikeda Municipal Hospital, 2Department of Radiology, Ikeda Municipal Hospital

キーワード :

【はじめに】
副脾は原則無症状であり治療は不要であるが,膵内に存在する場合はラ氏島腫瘍,膵癌,転移性膵癌等の膵腫瘍との鑑別が必要となるため,副脾と診断することは重要である.今回,Sonazoid造影超音波検査が診断に有用であった副脾症例を6例(膵内副脾3例,膵外の副脾3例)経験したため,うち膵内副脾の1例を中心に報告し,Sonazoid造影超音波検査における副脾の画像所見の特徴を述べるとともに,膵内副脾の診断におけるSonazoid造影超音波検査の有用性について考察する.いずれの症例も超音波装置はGE Healthcare社製Logiq 7を用いた.
【症例】
膵内副脾の1例は59歳男性,糖尿病の精査加療入院であり,スクリーニングの腹部超音波検査で膵尾部に直径13.2mm大の境界明瞭,辺縁整なlow echoic noduleを認めた.造影CTでも膵尾部に造影効果を伴う結節を認め,その形態より副脾が疑われた.そこでSPIO-MRIを施行したが,SPIO投与前後でその結節に有意な信号低下は認められなかった.またスズコロイドシンチグラフィにても副脾を疑わせるuptakeは認められなかった.次にSonazoid造影超音波検査を施行したところ,結節はvascular phaseにて濃染され,脾臓とほぼ同じtime-intensity curveを示した.またpost vascular phaseでも脾臓とほぼ同じ濃染を示し,TruAgent Detection(TAD)にて明瞭な信号を認めたため,網内系細胞の存在が示された.よって脾臓とほぼ同じ血流パターンを示したこと,および網内系細胞の存在により,その結節は副脾であると診断した.その後約1年半画像的に経過観察しているが,結節のサイズ,形態とも不変である.残りの5例においても同様に,造影CTや腹部超音波検査で副脾を疑わせる結節が認められ,Sonazoid造影超音波検査にてvascular phaseおよびpost vascular phaseにおいて脾臓と同等の濃染を認めたことにより,膵内副脾あるいは副脾であると診断した.
【考察/結語】
原則として副脾は組織学的に脾臓と同一であるため,多血性であること,および網内系細胞を有していることが特徴であり,これらの特徴が副脾の画像診断の鍵となる.そのため従来は超音波検査や造影CTに加え,SPIO-MRIやシンチグラフィが用いられてきた.Sonazoid造影超音波検査は,多血性および網内系細胞の存在をともに評価することのできる画像検査法である.すなわち,脾臓と同様にvascular phaseおよびpost vascular phaseにおいて濃染されることがSonazoid造影超音波検査における副脾の特徴である.その有用性の一つは,1例目の膵内副脾のようにSPIO-MRIやスズコロイドシンチグラフィで診断に至らなかった症例がSonazoid造影超音波検査で診断に至るなど,空間分解能の高さである.特にpost vascular phaseにおいてTADを行うことにより,網内系細胞の存在を非常に明瞭に描出することができる.それに加えSonazoid造影超音波検査は放射線被爆が無く,安全性,コスト,簡便性の面においても,従来の副脾診断のゴールドスタンダードであるSPIO-MRIやシンチグラフィよりも優れている.これらの特長を有するSonazoid造影超音波検査は膵内副脾を疑う症例にまず考慮すべき画像検査法であると考えられた.