Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

シンポジウム
シンポジウム12
膵疾患の超音波診断

(S185)

超音波内視鏡による慢性膵炎診断 -特に早期慢性膵炎診断について-

The role of EUS in the diagnosis of chronic pancreatitis in early stage

池田 恒彦1, 入澤 篤志2, 引地 拓人3, 渋川 悟朗1, 高木 忠之1, 佐藤 愛1, 佐藤 匡記1, 鈴木 玲1, 小原 勝敏3, 大平 弘正1

Tsunehiko IKEDA1, Atsushi IRISAWA2, Takuto HIKICHI3, Goro SHIBUKAWA1, Tadayuki TAKAGI1, Ai SATO1, Masaki SATO1, Rei SUZUKI1, Katsutosi OBARA3, Hiromasa OHIRA1

1福島県立医科大学 消化器・リウマチ膠原病内科学講座, 2福島県立医科大学 会津医療センター準備室, 3福島県立医科大学付属病院 内視鏡診療部

1Department of Gastroenterology and Rheumatology, Fukushima Medical University School of Medicine, 2Preparatory Office for Aizu Medical Center (Gastroenterology) Fukushima Medeical University School of Medicine, 3Department of Endoscopy, Fukushima Medical University School of Medicine

キーワード :

慢性膵炎の予後は悪く,慢性膵炎(CP)の予後調査によれば,CP患者の死亡率は一般人口の死亡率の約2倍とされ,1993年の世界的な疫学調査では,膵癌の発生率は年齢・性別・国を調整した予想発症数の26倍にものぼることが明らかにされた.このように,CPは難治性膵疾患として厳密に患者のマネージメントを行わなくてはならない重要な疾患である.CPは,膵臓の内部に不規則な線維化,細胞浸潤,実質の脱落,肉芽組織などの慢性炎症が生じ,膵臓の外分泌・内分泌機能の低下を伴う病態である.その画像診断としては腹部超音波検査や逆行性膵管造影検査(ERP),CT検査などが施行されるが,これらの検査で異常が指摘された時にはすでにかなり進行した病態であるとされる.一方,超音波内視鏡(EUS)は至近距離から高解像度で膵実質変化を詳細に観察できるため,他の画像診断法では評価困難な微細な膵実質・膵管変化(線維化)を比較的早期に捉えることが可能である.これまでにいくつかのEUSによるCP診断基準が提唱され,各々のEUS所見は組織学的変化と一対一対応での病理組織学的背景が推定されている.特に早期CP所見としては,膵実質や主膵管・分枝膵管の変形をきたす以前の変化としての線維化が重要であり,主膵管膵実質変化としてはfocal fibrosisを示すとされるhyperechoic foci(点状高エコー),bridging fibrosis を示すとされるhyperechoic strands(線状高エコー),interlobular fibrosis を示すとされるlobularity(分葉状エコー)が早期変化として重要と考えられてきた.また,膵管変化としては,periductal fibrosis を表すhyperechoic ductal margin (膵管壁の高エコー化)も早期CP所見の一つとされてきた(Wallace MB, et al. Pancreas, 2001).これらの高エコー所見の客観性は以前から問題視されてきたが,画像解析ソフトを用いた我々の検討では,EUSでの軽症CP(早期にあたる)における高エコー域は正常に比して有意に広く(正常:0.86±0.67 mm2 ,軽度CP:7.28±2.98 mm2)また,中等度CP(18.12±2.56 mm2)に比して有意に小さく,高エコー所見の観点からはEUS所見の客観性を示せた.また,ERP所見との相関についても,同時期にEUSとERPを施行した67人を対象として検討したところ,ERCPの「軽度」はEUS 所見が3個で80%以上の一致率であり,ERPでは描出されていない所見までEUSが捉えている可能性も考慮すると,EUSは低侵襲な早期診断法として非常に有用であると考えている.さらには,明らかな原因を同定できない上腹部痛で受診し,初回EUSで早期CPと考えられた7症例についてEUSで経過観察を行ったところ,6症例でEUS所見の変化(所見数増加・減少)が見られ,EUSはその微細な変化を確実に捉えているものと考えられた.2009年の慢性膵炎診断基準改訂において新たに早期慢性膵炎診断基準が提唱され,この診断におけるEUSの重要性が明記された.より早期からの慢性膵炎診療のためにも,EUSを施行する医師にとっては各所見の理解は重要と考えられる.