櫻木 雅子¹, 尾本 きよか^{2, 3}, 関根 理¹, 蓬原 一茂¹, 小西 文雄¹, 谷口 信行³

Masako SAKURAGI¹, Kiyoka OMOTO^{2, 3}, Osamu SEKINE¹, Kazushige FUTSUHARA¹, Fumio KONISHI¹, Nobuyuki TANIGUCHI³

¹自治医科大学附属さいたま医療センター　外科, ²自治医科大学附属さいたま医療センター　総合医学第1講座（臨床検査部）, ³自治医科大学　臨床検査医学

¹Department of Surgery, Saitama medical center, Jichi Medical Univercity, ²1st Dept. of integrated medicine, laboratory medicine, Saitama medical center, Jichi Medical Univercity, ³Clinical laboratory medicine, Jichi Medical Univercity

キーワード :

【はじめに】
乳癌手術におけるセンチネルリンパ節（SLN）生検の有用性が明らかになり，これを利用して腋窩リンパ郭清の省略が考慮されるようになってきた．現在SLN同定法は核医学的手法と色素法が主流であるが，それぞれ短所があり全国での普及を妨げている．そこでOmoto K, et al1）は2009年に，これらの欠点を補う新しい方法として超音波造影剤ソナゾイドを用いた手法を提案し，乳癌患者におけるSLN同定の有用性を臨床的に初めて報告した．今回われわれはその手法を踏襲しつつ，手術当日ではなく前日に検査室で本検査を施行し，良好な結果が得られたので報告する．
【対象・方法】
乳癌5症例を対象に，手術前日に超音波検査室でキシロカイン局麻後に，乳輪下12時方向にソナゾイド溶液2mlを投与し，十分なマッサージの後にリニア型探触子を用いてSLNを確認し，皮膚上にマーキングした．手術当日は色素法を施行したが，皮膚上のマーキング位置をガイドに切開線を入れリンパ節生検を行い，両法によるSLNが一致するかを確認した．
【使用機器・条件】
装置:アロカ社製 ProSoundSSD-α10，探触子：ブロードバンドリニア型UST-5412造影モード：Extended Pure Harmonic Detection （ExPHD） 送受信周波数： 4.3-8.6MHz　，音圧：MI（mechanical index） 0.15-0.19
【結果】
5例中全例ともマーキング位置の直下に染色されたリンパ節を容易に見つけ出すことができた．本法を併用することによりSLNの位置（深さ，方向）を超音波画像で確認でき，それゆえあらかじめ切開位置を正確に決めることができた．また手術前日にソナゾイドを投与したことで，手術当日の色素法によるリンパ節の染色性も改善し，手術中の同定がより容易になった．
【考察】
従来の色素法にソナゾイドによる造影超音波検査法を併用することで，切開前より的確なSLNの位置把握が可能になり，SLN同定時間の短縮に大いに寄与すると思われた．今回の症例では色素法と造影超音波法とで同定されたリSLNは全例で一致しており，有効なSLN同定法として十分実用化が期待できるものと考えられた．
【参考文献】
1）Omoto K, Matsunaga H, Take N, Hozumi Y, Takehara M, Omoto Y, Shiozawa M, Mizunuma H, Harashima H, Taniguchi N and Kawano M. Sentinel node detection method using contrast-enhanced ultrasonography with Sonazoid in breast cancer: Preliminary clinical study. Ultrasound Med Biol 2009 Volume 35, Issue 8, Pages 1249-1256