Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

シンポジウム
シンポジウム10
ソナゾイドを用いた造影超音波の最前線 〜体表臓器などへの臨床的有用性の検証〜

(S177)

各種画像診断モダリティを用いた乳癌センチネルリンパ節生検の比較:造影エコー下センチネルリンパ節生検の特徴と問題点について

Comparison of Sentinel Lymph Node Biopsy between Multiple Diagnostic Modalities: Advantage and Disadvantage of Contrast Ultrasonography

中田 典生, 西岡 真樹子, 宮本 幸夫, 福田 国彦

Norio NAKATA, Makiko NISHIOKA, Yukio MIYAMOTO, Kunihiko FUKUDA

東京慈恵会医科大学放射線医学講座

Department of Radiology, Jikei University, School of Medicine

キーワード :

【はじめに】
現在,臨床的に広く用いられている乳癌センチネルリンパ節生検(SLNB)はラジオ・アイソトープ(RI)を用いた方法である.しかしこの方法には,近年RI供給に関する将来的根本的な問題があることが知られてきた.それは,SLNBに用いるRIの核腫である放射性医薬品中のテクネチウム-99m(99mTc)の親核種であるモリブデン-99(99Mo)の供給問題である.現在わが国の99Moは,100%海外からの輸入に依存しるが,その最大の供給元であるカナダの原子炉が停止し,現在通常の約40%程度の供給量となっている.オランダなどほかの原子炉の緊急増産によってなんとか供給が保たれているが,根本的な解決には至っていない.そこで今回,我々は乳癌SLNBに用いられるモダリティとしてRI,造影超音波,MRI,CTについて,その特徴と問題点をリストアップして比較検討することにする.RIについては,当院で臨床的に実施されている99mTcフチン酸を用いた方法,造影超音波については,われわれが行った造影剤としてソナゾイドを用いて,豚動物実験にて色素とともに乳腺近傍から皮下注射をして超音波造影モードにてリアルタイムに観察する方法,MRIはGd製剤の皮下注射する方法(文献的検討),CTについてはヨード造影剤を皮下注射する方法(文献的検討)をそれぞれ比較した.
【結果および考察】
ソナゾイドを用いた乳癌SLNBについては,特に特殊な造影モードを用いなくても通常の静注造影超音波検査に対応する表在用探触子でリアルタイム表示にてセンチネルリンパ節およびリンパ管が描出可能であった.超音波は,X線被曝や造影剤供給の問題もなく,低コストで手技もシンプルな検査がリアルタイムで施行できるという長所がある.しかし造影超音波が2次元1断層面のみしか取得できないので,リアルタイムに3次元像が得られず,客観性のある画像が得られないという欠点がある.CTやMRIを用いた乳癌SLNBにはコストの問題がある.またCT下に乳癌SLNBを行う際,リアルタイムに施行することは,術者(乳腺外科医)のX線被曝の問題がある.オープンMRIガイド下のリアルタイム生検には画質の問題ポジショニングの問題があり,超音波に劣ると考えられる.超音波(ソナゾイド),MRI(Gd造影剤),CT(ヨード造影剤)の皮下注射についての安全性については確立されたエビデンスはないが,Gd-DTPA造影剤については近年,透析患者の腎性線維化性皮膚症(NFD)が問題となっている.これはGd製剤の皮膚への沈着がみられるものであり,キレートされ無毒化されているとはいえ重金属であるGdが皮膚に沈着して排泄されない状態には問題がないとはいえない.従ってGd造影剤の皮下注射については,安全性についての今後の慎重な検討が必要と考える.一方,ソナゾイドを構成する燐脂質は,Gdに比べれば安全であるが,シェルの膜は界面活性剤であるので,皮下注射については安全性の検証が必要不可欠である.現在,99mTcを用いるRI検査は,代わりの核腫の利用などにより直ぐに検査ができなくなるような危機的状況ではないが,乳癌SLNBについては,99mTcに代わる核腫がない状態であり,今後超音波造影法も含めた方法の実用性についての検討を続けていく必要があると結論する.