Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

シンポジウム
シンポジウム10
ソナゾイドを用いた造影超音波の最前線 〜体表臓器などへの臨床的有用性の検証〜

(S175)

前立腺癌におけるソナゾイド®を用いた造影超音波法の有用性

Value of contrast-enhanced ultrasonography for prostate cancer using Sonazoid®

上村 博司

Hiroji UEMURA

横浜市立大学大学院医学研究科 泌尿器病態学

Urology, Yokohama City University Graduate School of Medicine

キーワード :

最近,高齢化や食生活および生活様式の欧米化に伴い,前立腺癌の増加が著しい.また,前立腺特異抗原(prostate specific antigen: PSA)が前立腺癌の腫瘍マーカーとして普及してきたことで,無症状ではあるがPSAが高値を示す症例で,癌病巣の限局した早期癌が増加している.前立腺癌の検査法は,血清PSA値や直腸診のほかに,経直腸的超音波断層法(trans-rectal ultrasonography: TRUS)がある.病理診断のために,TRUSをガイドにして経直腸的あるいは経会陰的アプローチで針生検を行っている.しかし,TRUSでは癌病巣の描出が困難な場合が多く,画像を見ながら定点的に生検針を刺入する系統的生検が行われることが多い.その結果,癌検出率は満足のいくものではない.近年,肝腫瘍の診断に使用されている第二世代の超音波造影剤であるソナゾイド®は,造影CTと同等かあるいはそれ以上の造影効果を示し,造影超音波法は簡便かつ安全性の高いものとして確立している.私達は,前立腺の超音波検査においてソナゾイド®を用いた造影超音波法を行い,癌病巣や前立腺肥大症の描出,標的生検の可能性について検討した.その結果,造影超音波による前立腺癌の所見は,正常部分に比較して強く早く造影されるだけでなく,造影低エコーを呈したり,異常血管を伴ったりなど,バリエーションに富んでいることが分かった.実際に,異常造影画像の部位を生検した結果は,系統的生検より有意に高い癌検出率を示した.従来,前立腺癌の造影超音波画像の特徴は,強く造影される部位と報告されていた.しかし,今回の私達の解析で,前立腺癌の造影所見は多様性を示していることが分かった.また,安全性の高いソナゾイド®を使って,容易に造影超音波検査ができるようになれば,前立腺癌の質的診断や存在診断(臨床病期),あるいは放射線照射やホルモン療法の治療判定,さらには小線源治療などの支援検査法として,有用な手段になるに違いないと思われる.