Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

シンポジウム
シンポジウム9
マイクロバブルの基礎と臨床をめぐって

(S173)

マイクロバブルのHIFU治療の増強効果

Enhancement of HIFU effect using microbubbles

森安 史典

Fuminori MORIYASU

東京医科大学 消化器内科

Department of Gastroenterology & Hepatology, Tokyo Medical University

キーワード :

【はじめに】
超音波を使った治療法の中で,強力集束超音波(High intensity focused ultrasound, HIFU)は,臨床上最も実用に近いものといえる.近年体腔内からの照射法では前立腺肥大が,体表からの照射では子宮筋腫がその対象とされ,良性腫瘍が主たる適応症となっている.一方では,前立腺癌や乳癌,肝癌,膵癌などの悪性腫瘍もHIFU治療の対象として臨床研究が進みつつある.マイクロバブルが組織内や血管内にあるときにHIFU照射が行われると,それがcavitation nucleiとなってHIFU効果が増強されることはよく知られている.またそのことを利用した臨床研究も散見されるようになった.このマイクロバブルのHIFU増強効果について,基礎的検討や臨床応用についての自験例を紹介し,文献的考察も加えて述べたいと思う.
【基礎的検討】
超音波伝搬媒体の中でHIFU照射を行うと,焦点領域から温度上昇が見られ広がっていく.その程度は音圧と照射時間の積に依存している.マイクロバブルを含んだ媒体は,そうでない場合に比べて温度上昇は早くかつ広くなることが観察される.このマイクロバブルの熱効果はその濃度に依存している.ソナゾイドマイクロバブルは,静脈投与された後,Kupffer細胞に貪食され肝臓に蓄積する.静注後一定時間経ったあとに取り出した肝臓にHIFU照射をする,ex vivoの動物実験を行うと,超音波で高輝度となる範囲が,マイクロバブル非投与肝に比べて著しく増大する.その効果はマイクロバブルの投与量とHIFU照射の音圧に依存するが,高濃度のマイクロバブルはその範囲を逆に縮小させる.
【臨床的検討】
肝癌症例のHIFU治療の際に,減衰や照射ウインドウの制約のために十分な焼灼効果が得られない場合,ソナゾイド投与下にHIFU治療を行っている.マイクロバブルを静注した場合は,そうでない場合に比べて焼灼範囲が広く得られる.この場合,マイクロバブルの投与量やHIFU照射条件の最適化が必要である.
【まとめ】
マイクロバブルをHIFU治療のenhancerとして用いることは,今後広く行われて行くと考えられる.さらに同時に血中にある薬剤を,HIFUにより標的とする組織や細胞に到達させる“薬剤送達“の手段としても期待されるところである.