英文誌(2004-)
シンポジウム
シンポジウム9
マイクロバブルの基礎と臨床をめぐって
(S172)
マイクロバブルを用いた単細胞マニピュレーションの新しい試み
A New Method Using Microbubbles to Manipulate Single Cells
立花 克郎
Katsuro TACHIBANA
福岡大学医学部 解剖学講座
Department of Anatomy, Fukuoka University School of Medicine
キーワード :
細胞に遺伝子を導入する技術には,ウイルスベクターを用いた方法やエレクトロポレーション法があるが,ともに局所的な細胞への導入に不適切である.また,抗癌剤などの多くの薬剤は細胞内への取り込みが低くいと同時に副作用も強いため,放射線などの補助治療が必要である.超音波による細胞穿孔法とマイクロバブル(微小気泡)を併用して薬物・遺伝子を細胞内へ取り込ませるソノポレーション法(超音波穿孔法,SONOPORATION)は,標的細胞へのダメージも低く,効率よく薬物や遺伝子を細胞内へ導入できることが分かっており,既に医学臨床分野において新しい薬物デリバリー・システムの一つとして注目されている.我々は上記の実験を行う時に単細胞周辺に規則的で,安定なジェット流が発生することを発見した.すべての実験は細胞が浮遊状態で行われた.マイクロバブルの振動でおこるこの液体ジェット流を利用し,細胞を能動的に空間移動できることが可能である.我々は超音波照射時にマイクロバブル(直径4ミクロン)に隣接する細胞を詳しく観察した.高速度ビデオカメラによる画像解析で細胞の回転運動が明らかとなった.回転運動が起こった細胞のそれぞれの生死判定(トリパンブルー法)では細胞自体に大きな形態的変化は認められなかった.今後,この音響力学的なマニピュレーション方法を利用し,細胞の3次元観察に応用できるとが期待される.