春日井 俊史¹, 廣岡 芳樹³, 高柳 正弘¹, 辻 敦¹, 杉本 啓之¹, 伊藤 彰浩², 川嶋 啓揮², 後藤 秀実^{2, 3}

Toshifumi KASUGAI¹, Yoshiki HOROOKA³, Masahiro TAKAYANAGI¹, Atsushi TSUJI¹, Hiroyuki SUGIMOTO¹, Akihiro ITOH², Hiroki KAWASHIMA², Hidemi GOTO^{2, 3}

¹袋井市立袋井市民病院　消化器科, ²名古屋大学　大学院医学系研究科消化器内科学, ³名古屋大学医学部附属病院　光学医療診療部

¹Department of Gastroenterology, Fukuroi-Municipal-Hospital, ²Department of Gastroenterology, Nagoya University School of Medicine, ³Department of Endoscopy, Nagoya University School of Medicine

キーワード :

【目的】
EUS-elastography（EUS-EG）を用いた慢性膵炎（CP）の病期診断の客観的な評価の試み．
【方法・結果】
2段階の検討を施行した（予備的的検討・前向き検討）．StudyⅠ：日本膵臓学会慢性膵炎診断基準によるCP確診例24名を対象とした．内視鏡はPentax社製EG-3630URおよび3670URK，超音波観測装置はHitachi社製EUB-8500およびHV-900を使用した．Sahaiらの9項目からなるCPのEUS分類を用いて EUS画像におけるCPのEUS所見を合計し，1から9までスコア化してEUSスコアとした．EUSスコアによりCPの重症度を3-4点:軽症CP，5-6点:中等症CP，7点以上:重症CPと定義した．解析には日立メディコ社製解析ソフト（EUS-elastographyで得られる膵組織における弾性情報の数値化が可能）を使用し，EUS-EGを用いた画像解析を実施．EUS-EG画像に設定した2×1㎝のROI内で以下の指標を検討した．1）. 歪値の平均:Mean，2）. color map白黒2値化時の硬組織領域の割合:Area，3）. ［硬い領域の周囲長2／面積 ］の平均:Mean of complexity，4）. ヒストグラムの歪度，5）. ヒストグラムの尖度．EUSスコアと5項目の指標との相関を検討．EUSスコアと有意な相関を示した指標を用いてROC曲線を作成，軽症と中等症以上を鑑別するcut-off値，中等症以下と重症CPを鑑別するcut-off値を決定．StudyⅡ：CP患者19名（確診10名，準確診1名，疑診8名）を対象．StudyⅠで得られたEUSスコアと有意な相関を示した指標を用いて，対象のCPの重症度を予測．更に各症例におけるEUSスコアを求め，EUSスコアによるCPの重症度判定を実施．cut-off値から求めたCPの重症度とEUSスコアによるCPの重症度判定を比較．
【結果】
StudyⅠ：Mean of Complexity（r＝0.868, P＜0.001）のみがCPのEUSスコアと有意に相関した．Mean of Complexity値のROC曲線を作成，軽症と中等症以上を鑑別するcut-off値47.34，中等症以下と重症CPを鑑別するcut-off値64.93を決定．StudyⅡ：重症度診断の一致率は，確診・準確診例： 9/11例（一致率81.8％），疑診例：7/8例（87.5％），軽症CP例：6/6例（100％），全体：16/19例（84.2％）．
【結語】
EUS-EGは膵実質の変化を数値化して示すことが可能であり，慢性膵炎診断に有用であると考えられた．またMean of complexity値を用いたCPの重症度判定による軽症CP症例の抽出の可能性が示唆された．