Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

シンポジウム
シンポジウム8
組織エラストグラフィーの現況と展望

(S168)

慢性肝疾患におけるReal-time Tissue Elastographyの精度の検討

Usefulness of non-invasive assessment of fibrosis of the chronic liver disease using Real-time Tissue Elastography

藤本 研治1, 外村 明子6, 辰巳 千栄3, 石田 哲士4, 上嶋 一臣3, 三竹 毅6, 椎名 毅5, 工藤 正俊3, 加藤 道夫2

Kenji FUJIMOTO1, Akiko TONOMURA6, Chie TATSUMI3, Tetsushi ISHIDA4, Kazuomi UESHIMA3, Tsuyoshi MITAKE6, Tsuyoshi SHIINA5, Masatoshi KUDO3, Michio KATO2

1国立病院機構 南和歌山医療センター 臨床研究部 内科診断学, 2国立病院機構 南和歌山医療センター 内科, 3近畿大学 消化器内科, 4市立貝塚病院 内科, 5京都大学大学院 人間健康科学, 6(株)日立メディコ USシステム本部

1Division of Clinical Research, NHO Minamiwakayama Medical Center, 2Department of Internal Medicine, NHO Minamiwakayama Medical Center, 3Department of Gastroenterology, KInki University School of Medicine, 4Department of Internal Medicine, Kaizuka City Hospital, 5Department of Human Health Scinence, Kyoto University Graduate School, 6Ultrasound Systems Division, Hitachi Medical Corporation

キーワード :

【目的】
肝線維化の評価には生検組織診断がgold standardであるが,診断や治療による経時的評価には,侵襲的な肝生検には限界があり,非侵襲的検査法の併用が必要となる.我々は組織の歪みから相対的な硬さをカラー表示するReal-time Tissue Elastography(R)(以下RTE)を肝疾患に使用し,RTE画像の特徴量を重回帰式から算出された肝線維化staging推定値であるLF Indexが非侵襲的な肝線維化評価として有用であると報告してきた.一方,FibroscanやARFIを用いた肝弾性値の有用性が報告されているが,最近これらの肝弾性値に関与する因子として肝線維化以外に炎症や胆汁うっ滞等の動的因子の関与の可能性が報告されている.今回,RTEのLF Indexについてstaging, gradingと相関の有無につき統計学的評価を行い,炎症が影響を及ぼすか検討し,更にROC曲線によりRTE LF Indexの精度を検討した.
【方法】
対象は2005年5月から2009年12月まで組織学的に診断されたC型慢性肝炎,肝硬変合計306例(stage内訳はF0(HVを含む):16例,F1:81例,F2:97例,F3:68例,F4:44例)である.超音波診断装置は日立メディコ社製EUB8500,HI VISION 900を用いた.心拍動による歪みを利用,肝右葉を右肋間より観察した.解析ソフトウエアにより歪み値平均値(MEAN),分散値(SD)と硬く描出された領域の面積(AREA),形状の複雑度(COMP),更にヒストグラムの歪み(SKEW),平均値への集中程度(KURT),RTEテクスチャの均等性(ENT),複雑度(IDM),一様性(ASM)の計9種の特徴量を抽出,全例につき組織診断(新犬山分類)F因子,A因子の重回帰モデルより導出した重回帰式より算出された推定値(以下staging推定値:LF Index,grade推定値:G値)をとstaging,gradingとを比較した.更にG値とgradeとの関連についてはF因子の影響を除外するためstaging別に分け比較検討した.次にLF IndexのROC解析を行い,F0-1/F2-4,F0-3/F4を識別するcut off値を設定,感度,特異度,正診率ならびにAUC(area under the curve)を算出した.
【結果および考案】
既報の通りstagingとの相関はLF IndexならびにRTEの9種の特徴量は高い相関(LF Index r=0.70,p<0.001)が認められたが,gradingとは認められなかった(G値r=0.32).また,staging別各群のG値とのgradingと相関は認めず(F1群G値:r=0.31,F2群G値:r=0.40,F3群G値:0.36,F4群G値:0.46),FibroscanやARFIの弾性値で報告されている炎症の影響はRTEでは受けないものと考えられ,組織弾性評価法の原理の違いが影響しているものと考えられた.またROC解析での精度はLF IndexのF0-1/F2-4間判別のAUCは0.83で,cut off値を1.95と設定すると感度76.6%,特異度75.3%,正診率76.1%であった.またF0-3/F4間判別のAUCは0.87で,cut off値を2.72と設定すると感度79.5%,特異度78.6%,正診率78.8であった.今回の検討ではF0-1/F2-4,F0-3/F4いずれも良好な識別能であった.
【結論】
LF Indexは炎症の影響を受けることなく肝線維化を反映しており,良好な識別能を有していた.RTEは非侵襲的に肝線維化の評価が可能であると考える.