Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

シンポジウム
シンポジウム8
組織エラストグラフィーの現況と展望

(S166)

乳腺エラストグラフィ画像に見られる横波の波長と伝播速度の算出,分散性の検討

Wave length, phase velocity and dispersion of the shear wave observed in the breast tissue as the lattice structure in the breast ultrasound elastography

杦本 卓司1, 渡邊 洋敏1, 渡邉 太郎2

Takuji SUGIMOTO1, Hirotoshi WATANABE1, Tarou WATANABE2

1純幸会 東豊中渡辺病院 外科, 2純幸会 豊中渡辺病院 外科

1Dept. of Surgery, Higashi Toyonaka Watanabe Hospital, 2Dept. of Surgery, Toyonaka Watanabe Hospital

キーワード :

エラストグラフィ画像中の斜め格子模様は上下に移動する歪みが方位方向のスキャンの時間差によって斜め線状に描出されるためで,移動する歪みは横波に対応すること,格子模様の傾斜から横波の伝播速度が算出できることをこれまでに報告した.今回格子模様として現れる横波の性質を明らかにするため脂肪織,乳腺,乳癌組織中の横波の波長と伝播速度を計算し分散性について比較検討した.
【方法】
HITACHI EUB-8500で記録した乳腺エラストグラフィBMP画像から歪み相対値を読み出し(図2)方位方向の周期的な起伏を平均化するため方位方向の一定幅(16pixel)でフーリエ変換し平均化した歪みを計算(図3),元の歪みとの差を横波の格子模様の歪みとした(図4).格子模様の歪み分布を2次元フーリエ変換すると距離方向(縦軸),方位方向(横軸)の波数の分布が得られるが,方位方向に一様な組織と仮定しスキャンの時間差を利用すれば横軸が時間軸になり,進行波の振動数が算出可能となる.一辺128pixelの正方形で2次元フーリエ変換し縦軸の各波数で最大の歪みを示す振動数を対応する振動数として波長と伝播速度を計算した.計算する正方形を一定間隔ずつ移動して計算を繰り返し平均の振動数と伝播速度を算出,波長との関係を求めた.
【結果】
格子模様の画像(図4)に傾斜が大きい(伝播速度が大きい)格子模様には間隔が広くなる(波長が長い)傾向が見られ,横波の波長に応じ伝播が速くなる分散性を示唆した.乳腺組織の格子模様の2次元フーリエ変換から波長1.3,2.2,3.4mmで平均の伝播速度は0.7,1.1,1.7 m/秒と計算され分散性を示した.上下いずれの伝播方向にも分散性を認め両者に差はなかった.脂肪織,乳癌でも同様な分散性を示すが波長と伝播速度の比に組織による有意な差は出なかった.歪みの振幅は乳癌,乳腺,脂肪織の順に大きくなった.
【考察】
格子模様の歪みの振幅は組織弾性に対応して変化し格子模様がアーチファクトである可能性は少ないと思われた.組織内を伝播する横波に分散性が示されたが,分散を示す波として表面波が知られており今回の知見は組織内を伝播する波の性質を示すものとして興味深い.
【まとめ】
エラストグラフィ画像の格子模様から横波の波長,伝播速度,振幅を算出し,脂肪織,乳腺,乳癌いずれの組織にも分散性を認めた.振幅は組織弾性に対応して変化した.