Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

シンポジウム
シンポジウム7
消化管疾患における超音波診断

(S164)

消化管診断基準小委員会からの報告

Report from the subcommittee on diagnostic criteria for gastrointestinal tract

森 秀明1, 畠 二郎2, 樫田 博史3, 関根 智紀4, 西田 睦5, 西川 かおり1, 長谷川 雄一6, 藤井 康友7, 本田 伸行8, 山田 博康9, 宮本 幸夫10

Hideaki MORI1, Jiro HATA2, Hiroshi KASHIDA3, Tomoki SEKINE4, Mutsumi NISHIDA5, Kaori NISHIKAWA1, Yuichi HASEGAWA6, Yasutomo FUJII7, Nobuyuki HONDA8, Hiroyasu YAMADA9, Yukio MIYAMOTO10

1杏林大学医学部 第三内科, 2川崎医科大学 検査診断学, 3昭和大学横浜市北部病院 消化器センター, 4国保旭中央病院 中央検査科, 5北海道大学病院 検査・輸血部/超音波室, 6成田赤十字病院 検査部生理検査課, 7自治医科大学医学部 臨床検査医学, 8寺元記念病院 画像診断センター, 9県立広島病院 消化器内科, 10東京慈恵会医科大学 放射線医学講座

1The Third Department of Internal Medicine, Kyorin University School of Medicine, 2Department of Clinical Pathology and Laboratory Medicine, Kawasaki Medical School, 3Digestive Disease Center, Showa University Northern Yokohama Hospital, 4Department of Laboratory, Asahi General Hospital, 5Department of Clinical Laboratory and Transfusion/ Ultrasound Laboratory, Hokkaido University Hospital, 6Department of Clinical Functional Physiology, Narita Red Cross Hospital, 7Department of Clinical Laboratory Medicine, Jichi Medical University School of Medicine, 8Diagnostic Imaging Center, Teramoto Memorial Hospital, 9Department of Gastroenterology, Hiroshima prefectural Hiroshima Hospital, 10Department of Radiology, Jikei University, School of Medicine

キーワード :

【はじめに】
平成20年度の日本超音波医学会用語・診断基準委員会にて新たに消化管診断基準小委員会の設置が要望され,理事会で承認の上活動が開始された.本委員会の目的は消化管領域の代表的な疾患の診断基準の作成であるが,用語・診断基準委員会からは消化管を専門としていない検者の診断の一助となるように上部および下部消化管検査の走査手順案についても併せて作成の要望があった.
以上の経過から本委員会ではまず上部および下部消化管検査の走査手順の推奨案について検討した.走査手順案や各疾患別の診断基準の作成にあたっては体外式超音波検査を主体に作成し,超音波内視鏡検査の所見は含めないことにした.カラードプラ所見については診断の一助となるような有用な所見があれば加味してもよいが,造影超音波所見については施行施設が少ないこと,またソナゾイドでは適応となっていないことなどから診断基準には記載しないことになった.また上部消化管検査の際に必要に応じて飲水法を併用すること,上下部消化管の検査の際に必要に応じて高周波プローブを併用する旨は明記することにした.また下部消化管検査に対する前処置については,通常は行わないことにした.
【走査手順案】
1)上部消化管疾患の走査手順ルーチンでは腹部食道から十二指腸球部までを観察することとして,頸部食道はルーチンの走査手順には含めないことになった.また超音波検査では穹窿部,体部,胃角部,前庭部などの明確な区分はできないので,胃を上部,中部,下部に分けて,穹窿部,体部,前庭部を併記することになった.上部消化管疾患の走査手順としては腹部食道→胃上部(胃穹窿部・胃底部)→胃中部(胃体部)→胃下部(胃前庭部)→幽門輪〜十二指腸球部の順番に観察していく方法が推奨された.
(1) 腹部食道:①心窩部縦走査(腹部大動脈の長軸断面)〜斜走査,②心窩部横走査,(2) 胃上部(胃穹窿部・胃底部):①左肋弓下斜走査,②左肋間走査,(3) 胃中部(胃体部):①左肋弓下斜走査,②左肋弓下横走査,(4) 胃下部(胃前庭部):①心窩部縦走査,②心窩部横走査,(5) 幽門輪〜十二指腸球部:①右上腹部斜走査,2)小腸の走査手順
左上腹部走査→右下腹部走査へ観察していくが,縦横走査に関しては特に指示せず,必要に応じて多方向から観察することにした.①上腹部走査(空腸),②右下腹部走査(回腸)
2)大腸の走査手順
回盲部には小腸の一部である回腸末端が含まれるが,走査の際は回腸末端と盲腸,虫垂は一連の走査で観察するため,大腸の走査手順に含めた.また記載順は回盲部・虫垂→上行結腸→横行結腸→下行結腸→S状結腸→直腸となっているが,実際の検査の際には上行結腸を描出してから回盲部へプローブを移動させた方が回盲部を同定しやすいことが多いことを明記することとなった.
(1) 回盲部・虫垂:①右下腹部走査,(2) 上行結腸:①右側腹部縦横走査,(3) 横行結腸:①上腹部縦横走査,(4) 下行結腸:①左側腹部縦横走査,(5) S状結腸:左側腹部縦横走査,(6) 直腸:①下腹部正中縦横走査
【今後の検討】
代表的な消化管疾患の診断基準を作成するにあたって,まず上下部消化管壁の測定の仕方と壁の厚さの正常値について検討を行うことになった.さらに代表的な疾患について,①消化管の層構造が確認できるか否か,②病変の広がり(限局性かびまん性か),③病変の主座はどこの層かといった着目点から分類していくことになった.さらに今後の検討として代表的な疾患に関しては疾患別の診断基準を作成していくことになった.