Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

シンポジウム
シンポジウム7
消化管疾患における超音波診断

(S164)

大腸疾患の診断

Diagnosis of Colon Disease

長谷川 雄一, 浅野 幸宏

Yuichi HASEGAWA, Yukihiro ASANO

成田赤十字病院 検査部生理検査課

Narita Red Cross Hospital, Department of Clinical Functional Physiology

キーワード :

【はじめに】
 消化管疾患における超音波診断の基本は,まず病変部位・罹患範囲を同定する事である.すなわち消化管のいずれかの部位に病変が局在するかを系統的走査法により同定し,腸管壁の肥厚・拡張の判別,罹患範囲,さらに高周波探触子による詳細な層構造の描出と解析により,的確な診断が可能となる. これらを踏まえ,大腸疾患に着目し,その画像的特徴や画像解析を進める上での鑑別ポイントについて,検討症例をもとに実践的な診断実例として報告する.
【大腸疾患の診断率】
 当院のUSによる大腸疾患の診断率を別図に示す.その適応疾患は多岐にわたり消化管領域におけるUSの有用性を示唆するものである.但し,疾患により診断能の差異が大きく,正診率については必ずしも満足できるものではなかった.いかに鑑別すべき疾患から最終診断を絞り込むのかが課題であり,診断能(正診率)の向上には描出されるUS画像が評価に耐えうるUS像であることや,緻密な解析が必要不可欠であると考える.
【症例から導き出した画像的特徴(抜粋)】
<大腸憩室炎>  特徴像の検出率は,①腸管壁より突出する低エコー腫瘤像(憩室周囲炎,膿瘍形成像)98%,②腫瘤内高エコー像 (浸出物エコー,糞石)85%,③周囲腸管壁(固有筋層及び粘膜下層)の肥厚(周囲消化管への炎症の波及)95%であった. <虚血性大腸炎>  臨床症状に加え,左側結腸優位に粘膜下層の浮腫性低エコー壁肥厚像が描出されれば診断は容易であり,閉塞性腸炎を除き正診率は90%であった.<急性虫垂炎>  施設間格差の検討のため掲載する.急性虫垂炎検出率(110/113)97%(関連所見を含む),一致率(71/88)81%,不一致率(17/88)19%.<感染性腸炎>  罹患範囲は割愛するが,壁径においてO-157腸炎10.3±1.8mm,キャンピロバクター腸炎7.9±1.4mm,サルモネラ腸炎7.4±1.5mmであった.
【まとめ】
 当院における診断成績を含め,超音波検査による大腸疾患の診断意義について報告した.大腸疾患における超音波診断は,効率的な治療方針の決定や病態生理の把握まで可能であると結論付けるが,そのためには診断装置を使いこなし,客観的で説得力のある画像を得ることが必須である.さらに得られた画像を緻密に解析し,エビデンスに基づく解釈をすることにより,正診率の向上がもたらされる.