Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

シンポジウム
シンポジウム7
消化管疾患における超音波診断

(S163)

小腸疾患の体外式超音波診断

Sonography of the small intestine

今村 祐志1, 畠 二郎1, 斉藤 あい1, 筒井 英明2, 神崎 智子2, 石井 学2, 眞部 紀明1, 鎌田 智有2, 楠 裕明3, 春間 賢2

Hiroshi IMAMURA1, Jiro HATA1, Ai SAITOU1, Hideaki TSUTSUI2, Tomoko KANZAKI2, Manabu ISHII2, Noriaki MANABE1, Tomoari KAMADA2, Hiroaki KUSUNOKI3, Ken HARUMA2

1川崎医科大学 検査診断学(内視鏡・超音波), 2川崎医科大学 内科学(食道・胃腸), 3川崎医科大学 総合臨床医学

1Laboratory medicine and clinical pathology, Kawasaki Medical School, 2GastroenterologyI, Kawasaki Medical School, 3General medicine, Kawasaki Medical school

キーワード :

【背景】
ダブルバルーン内視鏡やカプセル内視鏡の開発により小腸疾患への関心が高まっているが,現実にこれらの検査を疾患のスクリーニングとして位置付けることは困難である.一方より簡便かつ安価で非侵襲的な体外式超音波検査(以下US)は,消化管疾患に対する応用が次第に一般的となりつつあり,今後さらに期待される検査法である.そこで当院における小腸の超音波診断について報告する.
【当院における小腸疾患のUS診断】
当院の使用機種は東芝Aplio SSA-770Aおよび790Aであり,特に前処置は行っていない.通常胃・十二指腸および大腸の系統的スクリーニングに引き続き小腸の観察を行っている(所要時間1分以内)が,病歴や症状から小腸病変の存在が疑われる症例では左上腹部から骨盤腔を中心に圧迫を加えながら丁寧に観察している(所要時間数分).B-modeにおいては病変の部位,分布,層構造や病変周囲の変化など10に及ぶ項目をチェックしてUS診断を決定し,さらに小腸虚血が疑われる場合にはB-modeやドプラでの観察に加えてソナゾイド静注下での造影超音波を施行している.なお,造影剤の使用は当院倫理委員会の承認および患者からのinformed consentを得ている.平成19年3月から平成21年12月までに小腸虚血を疑い116例に対して造影超音波を施行した.また平成20年1月から平成21年12月までの二年間に当院でUSにより診断された疾患は計541例で,その内訳を以下に示す.腫瘍性疾患:転移性腫瘍7,悪性リンパ腫5,カルチノイド1,Peutz-Jeghersポリープ1,粘膜下腫瘍として脂肪腫3,GIST 2,血管腫2(pyogenic granuloma 1),異所性膵1,平滑筋肉腫1,リンパ管腫1炎症性疾患:クローン病280(のべ),シェーンライン・ヘノッホ紫斑病性腸炎6,ベーチェット病5,ループス腸炎4その他の疾患:腸閉塞119(絞扼性イレウス5),ヘルニア98(嵌頓ヘルニア4,閉鎖孔ヘルニア2,内ヘルニア1),メッケル憩室4,重複腸管1Gold standardとなる検査(例えばダブルバルーン内視鏡など)を設定し,USで小腸病変なしと診断されたすべての症例にその検査を施行したわけではないため,正確な感度や特異度は算出不能であるが,いずれの病変もその検出率はほぼ100%に近かった.またこれらの大半においてUSがその発見契機となっており,また質的診断能も他の形態学的診断法に比較しても遜色はなく,特にpyogenic granulomaや脂肪腫,異所性膵など小さな粘膜下腫瘍の診断はUSが最も優れていた.また小腸虚血における造影超音波の診断能は感度92%,特異度96%と良好であった.
【結語】
体外式超音波は適切な走査と的確な画像解析がなされることで小腸疾患のスクリーニングならびに精査いずれの目的においても有用な診断法であり,小腸領域においても活用されるべきと考える.