Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

シンポジウム
シンポジウム7
消化管疾患における超音波診断

(S161)

胃・十二指腸疾患の診断

Ultrasonographical diagnosis of gastroduodenal lesions

広岡 保明1, 秋鹿 典子1, 石杉 卓也1, 大栗 聖由1, 福田 千佐子1, 黒田 誠2, 遠藤 財範3, 斉藤 博昭3, 池口 正英3

Yasuaki HIROOKA1, Noriko AIKA1, Takuya ISHISUGI1, Masayoshi OHGURI1, Chisako FUKUDA1, Makoto KURODA2, Kanenori ENDO3, Hiroaki SAITO3, Masahide IKEGUCHI3

1鳥取大学医学部 病態検査, 2鳥取県立中央病院 検査部, 3鳥取大学医学部 消化器外科

1Dep. of Pathobiological Science and Technology, Tottori University, 2Laboratory, Tottori Central Hospital, 3Dep. of Surgical Oncology, Tottori University

キーワード :

【はじめに】
近年,消化管に対する超音波検査が普及し,臨床応用が行われてきたが,一般の消化器内科医や消化器外科医は消化管エコーを自由自在に使いこなしているわけではないのが現状と思われる.今回われわれは,胃・十二指腸病変の中でも重要な胃癌について,超音波検査で胃癌はここまでは診断できる,という事を明らかにすることを目的として,体外式超音波検査(以下,TUS)による胃癌の壁深達度診断および他疾患との鑑別診断について検討した.
【対象・方法】
2007.9〜2009.11に鳥取大学消化器外科を受診した胃癌患者のうち,術前にEUSあるいは総合画像診断(GIF,胃透視,CT等),およびTUSによる壁深達度診断が施行され,切除標本より組織学的深達度が判明した79名(82病変)を対象とした.術前抗癌化学療法施行患者は対象者から除外した.各組織学的深達度の対象病変はM(n=24),SM1(n=3),SM2(n=25),MP(n=7),SS(n=11),SE(n=12)であった.TUSは脱気水,お茶約300ml飲水後坐位,仰臥位にてコンベックス(3.5MHz),リニア(7.5MHz)型プローブで走査した.①対象病変と他疾患(他院症例も参考とした)との鑑別診断について検討考察した.②EUSあるいは総合画像診断,TUSによる壁深達度と組織学的壁深達度とを比較検討した.当科の術前深達度診断は,早期癌ではEUSにて行い,進行癌ではEUSを行わず総合画像診断で判定している.
【結果(1)・考察】
(1)胃のびまん性病変であるスキルス胃癌,急性胃粘膜病変(AGML),悪性リンパ腫などの鑑別点は,スキルス胃癌では層構造は確認できるが第3,4層が肥厚している,飲水によって壁が拡張しない(硬い),などが重要と思われた.(2)胃の限局性病変である胃癌,潰瘍,粘膜下腫瘍などでは,胃癌では層構造の消失がみられる点が鑑別点としてあげられた.しかしながら,潰瘍による低エコーと癌による低エコーとの鑑別は困難であることが多く,今後の課題と思われた.
【結果(2)・考察】
(1)TUSでは4病変が同定できなかった(同定率:94.9%).4病変は体上部後壁や噴門近傍のM病変3例とSM病変1例であり,肥満傾向の患者が多かった.同定率が良好であったのは,数例を除いてTUS前に病変の場所を紹介状や内科での透視,GIFで情報を得たからである.(2)T1の正診率はEUS(90.4%)がTUS(82.7%)に比べやや良好であったが,当院におけるESDの適応であるM-SM1の正診率はEUS(70.4%)とTUS(66.7%)ではあまり変わらず,SM2の正診率もEUS(44%)とTUS(48%)ではあまり変わらなかった.体中部より肛門側の胃癌ではTUSはEUSと遜色ない診断能を有していると思われ,今後まずTUSを行って深達度を判断し,TUSで困難であればEUSを行うなどの選択も可能になるのではないかと思われた.尚,TUSにおけるSM2の診断基準は第3層の断裂や1mm以上の陥凹とした.(3)T2の正診率は総合画像診断(55.6%),TUS(55.6%)ともにあまり良好ではなかった.しかしながら,総合画像診断で正診出来なかった8例中4例はTUSで正診できたことより,今後,総合画像診断にTUSの結果を加味することで,LADGなどの術式の選択がより的確にできる可能性があるのではないかと思われた.また,TUSにおけるMP,SSそれぞれの正診率(43%,18%)は良好ではなく,これらの鑑別ならびにT2の診断は今後の課題と思われた.(4)T3では総合画像診断もTUSも全例正診可能であった.
【まとめ】
TUSによる胃癌の診断および壁深達度診断は適応を限れば臨床応用可能であると思われた.今後の課題は,潰瘍との鑑別,T2の鑑別診断などがあげられた.