有田 淳一, 秦 正二郎, 進藤 潤一, 脊山 泰治, 青木 琢, 別宮 好文, 菅原 寧彦, 長谷川 潔, 國土 典宏

Junichi ARITA, Shojiro HATA, Junichi SHINDOH, Yasuji SEYAMA, Taku AOKI, Yoshifumi BECK, Yasuhiko SUGAWARA, Kiyoshi HASEGAWA, Norihiro KOKUDO

東京大学　肝胆膵・移植外科

Hepato-Biliary-Pancreatic Surgery Division, Artificial Organ and Transplantation Division, Department of Surgery, Graduate School of Medicine, University of Tokyo

キーワード :

【目的】
Gd-EOB-MRIは肝細胞癌（HCC）をきわめて高感度に描出するが，逆に境界病変までも拾い上げてしまうことが指摘されている．本研究ではHCC切除患者の持つ全結節に対するGd-EOB-MRI肝細胞相（EOB-HB）とソナゾイド術中造影超音波（CE-IOUS）の所見を比較検討した．
【対象】
2008年5月から2009年8月の間に肝切除術を受けた130人のうち，Gd-EOB-MRI検査を術前に行い，かつ全ての結節が切除されたか12ヶ月以上経過観察がなされた45人のHCC患者．
【方法】
EOB-HBで低信号を呈する場合，CE-IOUS早期相でhypervascularな場合，CE-IOUSクッパー相でhypoechoicである場合をそれぞれ陽性とし，それ以外を陰性として，全ての結節に対する所見を判断した．手術では，造影CTで古典的パターンを呈する結節と，CE-IOUSクッパー相陽性の結節を原則として切除した．非切除結節は12ヶ月間の造影CTで古典的パターンを呈するものをPotential HCCと判断した．病理でHCCと診断された結節と経過観察でPotential HCCと診断された結節を最終診断陽性と定義し，各画像所見の感度，特異度，正診率を計算した．また，造影CTで古典的パターンを呈さず，EOB-HBで陽性であった結節のCE-IOUS所見と最終診断とを比較した．
【結果】
全45人の患者背景は男性37人，年齢70（33-82）才（中央値［範囲］），HBV単独／HCV単独／いずれも陽性／いずれも陰性が11／21／0／13人，肝病理は肝硬変／慢性肝炎／正常肝が20／22／3人，病理HCC個数は1個／2個／3個が35／6／4人であった．全109個の結節が指摘され，切除された62個のうち59個が病理でHCCと診断され，経過観察された47個のうちPotential HCCと診断された結節はなかった．各画像の感度／特異度／正診率はEOB-HBが92％／46％／71％，CE-IOUS早期相が78％／94％／72％，CE-IOUSクッパー相が93％／98％／96％であり，いずれの数値もCE-IOUSクッパー相が最も高かった．中低分化HCCに対する各画像所見は大きな差はないが，高分化HCC10個に対する感度はEOB-HBが90％で最も高かった．造影CTで古典的パターンを呈さず，EOB-HBで陽性の結節は15個（8人）であり，CE-IOUSクッパー相では全て陰性であった．15個中3個は主腫瘍近傍に存在したため切除され，病理で2個は高分化HCC，1個は再生結節と診断された．残り12個は経過観察されたがPotential HCCと診断された結節はなかった．
【結論】
CE-IOUSクッパー相は切除すべき結節を高い精度で鑑別診断する能力を持つ．EOB-HBは高分化HCCに対して高い感度を持つが，境界病変や長期変化のない高分化HCCに対してもしばしば陽性を呈する．EOB-HB陽性を呈する非典型的結節をCE-IOUSクッパー相で鑑別することの臨床的有用性が示唆された．